「キバン」助成金、何者? 目次
「キバン」助成金とは、ムツカシクいえば「中小企業基盤人材確保助成金」のことです。
その名の通り、いろいろとややこしいイメージがあります。そのややこしさとは何なのかまとめたものです。
「キバン」助成金とは? : 簡単にまとめるとどういうものか、その概要です。
「キバン」助成金:年収はいくら?350万要件 : 受給要件2つの柱の1つ「年収350万要件」についてです。
「キバン」助成金、設備投資はいくら?250万要件 : 受給要件もう1つの柱「設備投資250万要件」についてです。
「キバン」助成金の改正 : 頻繁に行なわれる助成金の改正とはどういうものか、一般論です。
「キバン」助成金申請用紙 : この助成金の一番最初の申請用紙をUPしています。
「キバン」助成金、支給説明会 : 助成金の「もう1つの説明会」の模様です。
「キバン」助成金と「名ばかり管理職」 : この助成金と切っても切れない「管理職」のハナシです。
事業計画の概要について・新分野進出事業における区分 : この助成金の申請書類の1つです。
「キバン」助成金とは?
中小企業基盤人材確保助成金
新分野進出から6か月以内に申請準備を・・・・
★ どんな助成金か?
新分野に進出した事業主で、それに伴い250万円以上の出費をし、一定期間内に会社経営の基盤となる人(以下、基盤人材と言う)を採用した場合に、その人件費の一部が補助され、基盤人材の採用に伴い、一般労働者を採用した場合にその人件費の一部が補助されます。
★ いくらもらえる?
基盤人材 1名につき140万円(第1期,第2期に70万円ずつ支給)
生産性向上の基盤人材 1名につき170万円(第1期,第2期に85万円ずつ支給)
一般労働者 1名につき 30万円( 〃 15万円ずつ支給)
★ 受給のポイント
・以下のいずれかの「基盤人材」を雇用した場合、支給されます。
☆創業または異業種進出の基盤人材・・・下記①②いずれにも当てはまる人材。
①会社運営上必要な資格や知識を持った人材もしくは係長以上の職務に就く人材
②年収350万円以上で雇入れられる人材
(賞与や臨時的に支払われるものは除く)
※第1期支給申請時に175万円以上の賃金が支払われており、第2期支給申請時には350万円以上の賃金が支払われていること。
☆生産性向上の基盤人材・・・下記①②いずれにも当てはまる人材。
①新たに雇入れた生産性を向上させるための基盤となる人材(既存事業でも可)
②年収450万円以上で雇入れられる人材(60歳以上の場合400万円)
・250万円以上の設備負担(事業途中からの基盤人材は300万円)
新分野進出の日から助成金申請日までに決済をすませる予定の経費の合計金額
設備負担になるもの→ 新分野進出等に伴う事業のための機器の購入費・リース料・事務所家賃等(事務所家賃は最高12ヶ月まで算入できます)
・雇用保険の適用事業主であること
・新たな労働者を雇い入れ
雇用保険の一般被保険者(短時間労働被保険者除く)になれる人で基盤人材5名まで、一般労働者は基盤人材と同数まで雇入れ可能。
異業種進出+生産性向上の基盤人材は両方合わせて5名まで。
「キバン」助成金:年収はいくら?350万要件
「キバン」助成金はどうすればもらえるか、手っ取り早く言うと、
1、新しく事業を始めた
2、その事業に250万円設備投資した
3、その事業のために年収350万円以上の人材を雇った
というものです。2と3のクリアにはイロイロな喜悲劇が繰り広げられますが、今回は3の「350万要件」といわれるものに関してです。
言うまでもなく、支給申請は6ヵ月後350万円の半分175万円以上払ったことの証明を求められますが、当然払う前に「いくら払うのか?」という見込みをも求められます。
その見込みは350万円ギリギリというわけにも行きません。なぜかというと…
350万以上の年収のヒト(基盤人材)が1人なら良いのですが、これが複数になると差別を求められる場合があるのです。
例えば基盤人材Aの下に基盤人材BとCがつく場合、より責任の重いAのお給料がBやCと同等の350万円では、責任が重いのに給料が同等とはどういうわけだ、となるわけです。
しかし立ち上がったばかりの企業の場合、上の人物だからお給料が高い、とは一概に言えない場合が多いのです。責任が重いという理由だけでA氏の350万を400万、500万と上げると、6ヵ月後はどうなっているか分からないということで、それだけ払えない可能性もあります。
しかしたった3人の会社でも「組織図」を求めるお役所のことです。重責=高給というイメージが1人歩きしているのです。社長の給料ゼロで、社員の給料ウン十万という会社は現実に多々あります。それだけ社長は会社に捧げ尽くしているのです。そういう心情は助成金の要件には余り加味されません。
では年収400万だと半年で200万払わないと助成金は出ないのか?というのは基本的にはないといえます。しかし助成金はコロコロ変わる制度で、しかも細かいところは説明会に出ても分かりません。ここが「助成金社労士」が生きられる理由であるのは、社会の喜劇か悲劇でしょうか。
「キバン」助成金、設備投資はいくら?250万要件
「キバン」助成金の基盤人材の年収350万要件と並ぶ、設備投資250万要件とは…
創業または異業種進出から1人目の基盤人材を雇用して6ヶ月経ってから1ヶ月以内、つまり創業7ヶ月~1年余りの間に設備投資を250万円以上掛ける必要性があるというものです。その対象になるものはある程度限られています。
☆対象となるもの
(1) 不動産
ア 土地並びに建物の他、土地造成費、設計管理費及び建設解体費等
イ 事務所・店舗賃借料(管理費・共益費・水道光熱費は除く)、礼金
ウ 購入物件(所有権の登記がされていること)及び店舗等の改装にかかる費用
(2) 動産
ア 機械、装置、工具、器具、備品、船舶、航空機、運搬器具等並びにフランチャイズの加盟金、営業権、電話加入権の購入等
イ 従業員が新分野進出等事業に使用する車両
◇つまりある程度「カタチ」のあるものなら良いのです。具体的には写真の撮れるものといえるでしょう。
一方対象とならないものは…
★対象とならないもの
ア 事業主が私的目的のために購入または賃借した施設または設備等
イ 事業主以外の名義の施設または設備等
ウ 運転資金、資本金(現物出資を含む)、材料費、商品対価、消費財、保険料、法人登記料・登記手数料、許可料、広告費、コンピューターのソフト、サーバー使用料、回線使用料、人件費、求人広告掲載料等
エ 保証金、敷金等契約の終了蒔に返還されることが予定される金員
オ 取得するも解約あるいは第三者に譲渡した施設または設備等
カ 従業員のための福利厚生施設等
キ 全体の商品の中の一部の商品の営業権等
ク 国外において設置・整備される施設または設備等
ケ 配偶者間、1親等の親族間、法人とその代表者もしくは代表者の配偶者、代表者の1親等の親族間または法人とその取締役もしくは同一の代表者の法人間の取引によるもの
ケ 新分野進出等に伴う事業の用に供するための施設または設備等の設置・整備に要する費用について、その支払事実が明確でないもの
コ 申請事業主が、資本的、経済的及び組織的関連性から見て、独立性を認めることが適当でないとされる事業主から施設または設備を引継ぎ、新分野進出等を行う場合には、当該事業主から引継いだ部分の施設または設備
◆つまり、その会社のものでないものとか、コンピューターソフトなどカタチのないものは設備投資ではないのです。ただし具体的な基準は相談しなければ分かりません。お気軽にご相談ください。
「キバン」助成金の改正
「キバン」助成金は、毎年大幅な改正はありませんが、ちょっとした改正はしばしばありました。平成19年度も書類の形式が変わりました。要は「ムカシの書類形式で出すと無駄足になるよ」ということです。箇条書きにすると、
1、「男女雇用機会均等」の文言を入れることになった
2、「家庭生活両立」の文言を入れることになった
3、「青少年の動向」についてあれば書くことになった
手続自体は今までどおりやっていればどうってことはないのですが、この助成金の申請の第1段階、「改善計画の申請」は内容は決まり文句です。ここに男女雇用機会均等や家庭生活両立について入れないと、ムカシのマニュアルでは「通用しなくなった」ということです。
この改善計画の申請は「何々をやります!」という宣言書みたいなモノです。だからその「何々」は専門家にとっては何を盛り込むか決まっているのですが、その盛り込むものに「さらにてんこ盛りにしろ」というものが加わるのです。
3の「青少年の動向」などは、書類に1欄を設けるということのみで、別に青少年を雇うということでなければ書かなくても良いのですが、空白でも欄を設けないと「古い書式だから却下!」てなコトになりかねないのです。
”助成金専門家”ならともかく、普通に稼いでいる社長さんにははなはだ非合理に写る光景です。しかし国の政策は現実を変えるというところでなく、まずは書類の体裁から入ることが多いのです。
ある意味悲しいことですが、書類に「男女均等」などとお題目を書くところから始まるというのが、国家とか組織とか「民主主義」の悲しい一面ではあるのです。そういう合理性から行くとバカバカしいところをクリアするために、専門家を活用しましょう!
「キバン」助成金申請用紙
「キバン」助成金のほかに中小企業雇用創出等能力開発助成金などの助成金申請に不可欠な、改善計画の認定に使われる用紙が役所のHPにUPされています。
昔は既存の用紙を何とか研究し、自分でワードやエクセルの機能を駆使して作らねばならなかったのです。改装して係官にイヤミを言われながらツッコミを入れられたものです。何しろ助成金の申請フォームが多少変わったと説明会では言われる程度なので、どうしても自作はボロが出るのです。
遅いとは言っても大いに助かります。UPされたのは以下の書類です。
しかしどうしてこんなに遅れたのでしょうか。もうかれこれできてから10年近く経つ助成金です。
それは「助成金は相談させてもカネは出さない」モノだからです。パソコンで打つとなればラクでしょう。ラクになったので、では大いに申請しましょう、ということになってはお役所が困るのです。
予算があるからです。それを1年経たない間に食い尽くされては、役所の大恥になるような事件もありました。
助成金を出すにしても、大いに「苦労」させて出さないと、薄く広く出す方針の助成金を濃く狭く出しても困るわけです。ですからお役所は手書きでカーボン用紙を使うというのが未だ大好きなのです。
しかし我々専門家はそういうわけに行きません。コンピュータに強いヒトが「開発」して、書いちゃダメ出しされる効率の悪い助成金ロードを、少しでも通りやすいものにしようと舗装に努めてきました。
私自身もそういう偉大な先人のお世話になりました。ですからこういう措置が遅すぎるというのは、国がバラまく助成金制度の構造的なムリというものでしょう。ワザワザ嫌がらせのようなことをせざるを得なくなるという、世の中を悪くするような構造です。
まあしかし、そのムリを何とか転じて中小企業の福利に努めるのが専門家の役割ですね。その役割は助成金分野に限らずです。
「キバン」助成金、支給説明会
「キバン」助成金には事前の相談・説明会の他に、ある程度手続の段階の進んだ会社向けに「支給のための」説明会があります。
久々に行ってきました。手続の経験を重ねればこんな説明会には行かなくてもいいかというとそうでもありません。書類の細かい様式が変わりました、あやふやだったここの基準が変わりました、という”改正”は年がら年中行われ、しかも親切に教えてはくれないのです。
この情報収集を怠ると、いざ手続の場面に至って「こりゃ古い様式だね。書き直せ」「ここの要件を3年から5年にすることにした」などと意地悪を言われるのです。言われるだけでお構いなしなら良いのですが、突き返されると2度手間になったりして仕事の能率が落ちるのがコワイのです。
同じ助成金の説明会でも、大賑わいの受給相談説明会と違って、手続がある程度進んだヒト向けの申請説明会は10人くらいの小所帯です。説明する方もノンビリムードのように話すのですが、そこは年度末の法改正シーズン、新たな”改正”箇所がさりげなく説明されました。
その内容の1つは、
「資本的、経済的および組織的関連性から見て、助成金の支給において独立性を認めることが適当でないと判断される事業主と対象事業主との間で行われる雇い入れでないこと」という要件の基準が新たに示されたことです。
何のこっちゃ?と思いますが、要はボスとの縁が切れてないのに、そのボスからカネやヒトをもらって”新規創業”で助成金というのはおかしいでしょ?ということです。で、どういうのが縁が切れてないかという基準です。これは以前はあやふやだったのですが、この2月に新たな基準が策定されたようです。
1、資本の50%を超える企業からの雇い入れ
2、代表者が同一である企業からの雇い入れ
3、両方の会社の取締役を兼務しているものが、いずれかの会社において役員の過半数を占めている場合の、両者の間で行われている雇い入れ
これらの場合で雇われるヒトというのは、雇用ではなくて関連会社に出向するに過ぎないというのが役所の見解です。この助成金は新規事業に吸収される雇用をもっと多くしようというのが趣旨ですから、そんなものにおカネはやれないというのです。
ですからもし1~3の形態でこの助成金を受け取ろうというなら、この助成金の”創業”以外の形態の会社にいての”異業種進出”をオススメするところですね。雇い入れはあくまでも外部から、の原則は同じです。中途半端な独立は許さんぞと、当局は言ってるわけです。
「キバン」助成金と「名ばかり管理職」
NHK「名ばかり管理職」の番組がありました。
管理職になって、ヒラの社員よりも残業代の分お給料が少なくなってしまい、なおかつ責任が重くなってしまう、しかし家族のため、フリーターに逆戻りしたくない心理から無理をしてしまう、そんな状況は看過できないものです。一番の悪影響は、個人の健康・家族もさることながら、
○ 「エライ人になって見せるぞ」という向上心がなくなってしまう
ということです。それは人材の払底・枯渇から組織の停滞を意味します。ここでいう「エライ人」とはどういうものでしょうか。
助成金でも似たようなコトがあります。「エライ人」を雇った場合に出る「キバン」助成金は、管理職を雇った場合の人件費の補充ですが、その要件は主なものだけでも厳しいものです。
○ 部下が1人でもいること(社長と2人でも組織図を提出)
○ それ相応の能力があること(新卒や3年未満の経験ではダメ)
○ 年間350万以上の収入があること(残業代やボーナスは入れない)
この助成金は最初から「エライ人」が新事業を立ち上げるというものですが、残業代は要件に入っておらず、細かい出勤簿の提出もありません。つまり、
残業と労働時間は他と比べて要件として薄いのです。
管理職の要件、○権限、○労働時間、○待遇のうち、権限と待遇はウラを取ります。時間について問わないのは管理職なら長時間が当たり前だろう、というわけです。管理職でなくても、独立した社労士で成功している方はほとんど長時間労働です。権限は元々自分しかいないし、待遇は営業次第ですから当然でしょう。
NHKの番組の後半には、管理職に戻りたい課長さんのことをやっていました。やる気のある方、権限のある方のすべてを法律に当てはめるのは、戸惑いを隠せないというハナシです。重要なのは「働かされる」場合は不平が出て「働く」場合は不平が出にくいということです。
そういう意味では管理職の3要件にはもう1つ付け加えられるべきかも知れません。つまり、
○ エライ人になる可能性のある人であること、もしくはその意欲のあること
というものです。
働くヒトの中には「自分のため」「家族のため」という方もいるでしょう。それ以外に組織を大きくし、建設的な価値観を実現したいという方ならば、ドンドンエライ人になってもらい、モノでもカネでも時間でも惜しみなく与えても良いでしょう。
エライ人候補ならば、カネか?チイかメイヨか?という前に、もっとカッコイイ動機があるはずなのです。それに見合ったものを取っていただきたいものです。
事業計画の概要について・新分野進出事業における区分
平成20年度に新たに作られ、改善計画の申請の際に提出を義務付けられるようになった書類です。
A4用紙1枚だけだった「事業所概要」が拡大し、3~4枚になりました。「事業計画の概要について」は以下のサイトからダウンロードできます。
◆事業計画の概要について : 要は出資者は誰なの?いくら儲けるの?というモノ
◆新分野進出事業における区分 : 違う会社が同居している場合にその区分はあいまいじゃなかろうね、という書類。
これ、一言で言うと今後どうするのか、という書類なのですが、会社の計画を根掘り葉掘り聞きますよ、という感じが大きくなった印象を受けます。
しかも組織図を書くなど新味に乏しい内容です。それは以前も出していたのにここで改めて出すの、と言いたくなるようなもので、要は同じものを書く書類が増えたということです。
また、事業の収支計画は賢い事業主さんは描いているのですが、それをも出せというのは「改善」というコトバがきちんと実行されたか、その原資があるのか見極めたいというところでしょう。
しかしこの助成金はおカネがないということより、解雇を出してダメになるケースが結構多いのです。要はカネよりもヒトの問題と言えそうです。
また、この助成金の要件の1つに「違う会社と同居しているときにはその区分があいまいだと1円も出ないよ」というものがあります。そこは図面でしっかり区分して提出します。それを「新分野進出事業における区分」という書類で証明する必要があります。