退職金制度作成・改訂はどう行いましょうか?

流れは一般的には以下の通りです。

① 御社の退職金分析をいたします。
定年退職金、自己都合退職金の見込みを試算いたします。

② 退職金制度のご相談の内容を承ります。

 ・退職金制度の新規作成         ・退職金制度の廃止
 ・401Kの導入               ・退職金の要支給額の計算
 ・中小企業退職金共済制度への加入  ・退職金新規定への変更
 ・社外準備制度・積立制度の選定・移行処理

また何よりも、退職金に対する社長さんの思いをお聞かせいただきます。

③ 問題の解決方向を探ります。

 ・退職金制度を作る場合、どの程度「あげる」か?
 ・退職金制度は必要なのか?
 ・401Kを導入すれば、どのような問題が起こるか?
 ・中小企業退職金共済制度はいつから、どの額で掛けるか?
 ・退職金制度の変更はどこが難しく、どこが重要か?
 ・社外積立制度は不可欠か?

④ 退職金規程・計算表等の作成、労働基準監督署への届出をいたします。

 ・退職金規程の新規作成・改訂
 ・退職金計算書の新規作成・改訂
 ・従業員説明会用の文章作成
 ・役職者加算付退職金とは?

社外積立制度は不可欠か?

結論から申し上げますと、社外積立金は、300万円以上の退職金に!それ以下は社長さんのポケットマネーで可です。

「退職金というと社外に積み立てるもの」というイメージが先行していますが、中小企業の実態は以下の通りです。
○ 「社長さんがココロから退職印を払いたいヒト」は限られている。
○ 制度をしっかり作り過ぎると、払いたくないヒトにまで退職金が出てしまう。

そこで、中退共などに加入していただくことは当然として、その掛金のみならず、複数の「資金源」を設けることをお勧めしています。しかもその原資は社長さんのポケットマネーで十分です。長年勤められた、真の功労者は従業員の5%程度です。

理論的には5%の方が退職金をしっかり払いたい方ということになります。報いたい方にはしっかり報いましょう。当事務所がその仕組みづくりをお手伝いいたします。

従業員説明会用の文章作成

従業員の方に退職金制度改定を納得していただくには、合理的なおかつ言葉を尽くした説明が必要です。そのための説明書です。内容は以下の通りです。

1、どのような体系に変更するのか?
「支給目的を明確化し、かつ能力と成果、及び管理監督責任をより一層重視する体系」というような具体的なスローガンを掲げます。新制度、旧制度をそれぞれ説明します。

2、減額もありうることを明記。
従来の退職金は減額しないよう配慮することを踏まえ、旧制度の方、新制度の方、両方適用される方など、減額する場合を網羅します。

3、経過措置を明示。
新制度、旧制度にまたがるための説明書です。内容は以下の通りです。旧制度・新制度またがる方の計算方法とその例としてのシュミレーションも提示します。もしかすると抜けがあるかもしれませんので意見を求めます。

4、代表取締役・従業員の署名捺印を行います。これで契約書となります。

中小企業退職金共済制度はいつから、どの額で掛けるか?

中小企業退職金共済(中退共)は退職金制度の根幹を成すものでしょう。5千円、1万円と掛金を積み立てて、退職するときにガバッともらうというものです。他に特定退職金共済制度(特退共)もあります。この特退共は元本を取り戻すのに8年かかるところがネックです。

中退共の長所は、
○ 確定拠出型なので、会社に運用リスクが伴わない。
○ 会社側で退職金に伴うデータを管理する必要があまりない。
○ 会社が倒産しても、退職金だけは確実に確保することができる。

その短所は、
○ 社長さんが払いたくないヒトにも退職金が払われる。
○ 運用の手法が現実としてまずい。財政的に火の車。
○ 短期退職すると元金が戻らない。

などがあります。弊事務所としては大いに勧めたいところなのですが、制度を導入する前にちょっと「退職金」そのものについて考えてみてください。

退職金をなぜ払うかについては諸説ありますが、社長さんの気持ちとして、
○ 一生懸命やってくれて、長年定着してくれたヒトに報いたい

ということは変わらないと思います。上記の条件と逆のヒトには払いたくないということもあるでしょうし、そういうヒトが中小企業では圧倒的です。そこで弊事務所で提案したいのは、

○ 50万程度までの退職金はポケットマネーで支払う。
○ 300万以上の退職金なら積み立てが必要。それをやっていればかなりいい会社!

ということです。中小企業で中退共では約4年でモトが取れます。しかし4年で退職されたのでは退職金を払いたい功労者とはいい難いでしょう。中退共はいい制度です。それに全面的に頼るのではなく、中退共を一部として、他の部分を埋める退職金制度をご提案いたします。

ポイント制退職金と役職者加算付退職金の違い

弊事務所お勧めの退職金制度は「役職者加算付退職金制度」です。中小企業に最も実用的な退職金制度と自負しております。ポイント制退職金制度と比べるとわかりやすいです。

① ポイント制退職金制度は職能資格制度を作らないといけないが、
モデル退職金表の設定ありきで、中途入社、退社の多い企業には向かない。
役職者加算付き勤務年数制度は職能資格制度がなくてもできる。

② ポイント制退職金制度に必要な職能資格制度は職能等級の在籍年数で管理するが、
役職者加算付き勤務年数制度は役職在籍年数で管理する。
「課長・部長をやって最初の10年は毎年10万ずつ増える」という具合。

③ ポイント制退職金制度は人事記録を残す必要があるが、
役職者加算付き勤務年数制度は人事記録が不要。

役職は経営者のさじ加減で、また勤務年数は経営者の目の届くところで
それだけ頑張ってくれたということで、根本的な違いは労使ともに分かりやすい、ということです。

退職金計算書(退職金規程の別表)の注意点

当事務所は、中小企業の定着促進の意味から、勤務年数方式の退職金制度をお勧めしております。勤務年数というと、年功序列のように聞こえますが、年数が伸びたから退職金も伸ばさなくてはいけないという法律はありません。

賃金に比べて遥かに自由度が高いのが退職金です。社長さんの希望をより濃く反映できるのです。

その命になるのは勤務年数と退職金をどうリンクさせるかを基本とした計算書(別表といわれるものが多い)です。

この計算書の注意点は、
1、基本退職金(モトになる金額)をどこまで伸ばすか?
2、アメトムチ(増額係数、減額係数)をどこでどう適用するか?

ということです。基本退職金も伸ばす幅を調整できるのはもちろんですが、増額・減額の係数も0.5じゃなければならないという法はありません。御社の実情に合わせて、より現在と未来のモチベーション効果のある計算をするようにいたします。

退職金規程作成の注意点

要は退職金をどう支給するかを書けばいいのですが、要所要所は押さえておく必要があります。

1、適用範囲 : 適用する範囲よりも、適用しない範囲を明らかにしておきます。
2、受給資格 : 何年経ったら支給するのか、社会通念に照らして決めます。
3、支給区分 : 自己都合・会社都合の別をはっきりしておきます。
4、アメトムチ : どういうことならば加算するのか、どういう場合なら減額するのか、ここが最大の退職金規程の存在意義です。訴えられたら勝てるか、社会通念でどうなのか、効果をよく考えます。
5、社外積立(中退共など)と社内積立の兼ね合いをどうするか。

一般的にはこの5点を押さえればうまくいくでしょう。

退職金制度の変更はどこが難しく、どこが重要か?

退職金制度Aから別の退職金制度Bに移るような場合が想定される場合です。
最大の問題は、

○ 既得権と新しい制度の調整をどうするか?

という点です。新しくなった制度で会社の負担を減らそうというのが社長さんの考えの第1でしょう。しかしそれでは既得権を持つヒトが黙っていません。そこでどうするかというと、

○ 既得権の計算方法と、新制度の計算方法をミックスしよう

という案ができるわけです。しかしこの方法は

○ 古い退職金制度の計算方法など、年月が経つとみな忘れてしまう

という問題があります。誰も当時を知るものがいなくなったとしても、分るような退職金制度の橋渡しが必要なのです。そこで弊事務所が提案したいのは、

○ 既得権のヒトは既得権で、新制度のヒトは新制度で、どちらか得な方で計算する

ということです。それでは新制度になって勤続する既得権を持つヒトがいなくなるじゃないか!とお叱りを受けそうですが、そこは社内のバランスで社長さんの匙加減で上乗せします。

何しろ一番重要なのは新制度による会社の負担の軽減です。既得権は保障するとして「分りやすい」橋渡し制度を作ることこそ、新制度定着の第一歩です。

401Kを導入すれば、どのような問題が起こるか?

退職一時金を廃止して、401Kに切り替える場合、どのような問題が考えられるでしょうか。
ちょっと考えて分かるのが以下の問題です。

1、教育負担…ファンド教育、運用教育の負担
2、定着への問題…ポータビリティ(流動性:どこの会社に勤めても「持っていける」)

また、ライバル会社に幹部が引き抜かれて、部下まで連れて出て行った
場合を考えましょう。その退職時に401Kを持っていったら経営者の方はどう思うでしょうか?

当然清清しくは思えないでしょう。そもそも中小企業の退職金とは何のためにあるのでしょう?

中小企業が一番悩んでいるのは勤続の問題です。

40年いてくれないと困る、だから勤続の奨励の意味として退職金制度を作るのです。
今は10年未満のヒトの勤続奨励です。退職一時金の規程とは極めて現代風の規程なのです。

どの業界でも退職金が馴染むとは言いません。JASDAC上場には401K導入が必要ですし、
証券会社のような歩合の営業会社には退職金という概念はなくても良いでしょう。

しかしせっかくある退職金制度を、社員の方の定着、もしくは士気の向上に
使わない手はありません。退職金規程のある会社は立派な会社として
認知されます。決して原資がかからない方法で設定することが可能ならば、
退職金規程も会社の発展に絶大な貢献をするでしょう。

退職金制度は必要なのか?

制度を変える、又は廃止するとどのような影響が出てくるでしょう。
例えば以下のような社員の退職金を廃止して、年俸制に
改めるとしましょう。
 
幹部 基本給   役職手当   家族手当   給与総額   年間賞与   退職金掛金   年間賞与
    350,000  40,000   20,000    410,000  1,500,000  10,000     6,540,000

年俸制を採用して、賞与なし、退職金なしに変更
基本給 545,000×12

するとどういうことになったでしょうか?

この幹部の方のみならず社員の方全員がこういうようになります。

・ウチは時間外手当が出ない。 ・ウチは家族手当すら出ない。
・ウチは賞与がない。       ・ウチは退職金すら出ない。

その結果は、社内の雰囲気の悪化、優秀な従業員の退職につながります。
退職金を廃止すればドンブリになるだけです。
低くてもよいので、退職金制度は一時金制度として残すべきです。

ドンブリ=何々「込み」という表現です。
役職者になって何々「込み」というのはトラブルの元です。

給与明細とは一種の見積もりです。内訳を表示するために手当があります。
それをなくしてしまうと「家族手当も出さない血も涙もない会社」ということになります。

年俸制というのはそういう名前の「ドンブリ」と考えた方がいいでしょう。

定年退職金、自己都合退職金の見込みはどれくらいか?

退職金規程と社員名簿を見ながら積算していきます。

・年齢が高い方は辞めないので、定年退職金の計算で。
・年齢が若い方は10年後、20年後の自己都合退職金で。

ということを基本として計算いたします。もちろん、定着率や社風なども考慮に入れますが、最も重要なことは、「年齢が高い 年齢が若い」を原則としてどこで分けるのかということです。

若くても年配者でも全員が定年で退職、というモノが通用するのは大企業でのことです。当事務所では中小企業の退職金にかかる年齢の分け方は「40歳」として、退職金を計算します。

つまり
40歳以上で勤続5年以上―定年グループ
40歳未満―10年後、自己都合グループ
と分けることが一般的なようです。

退職金制度を作る場合、どの程度「あげる」か?

結論から申し上げると「社長さんのアタマの中にある」ということです。
各人各社各様で退職金の額は存在し、相場もありません。

社長さんの考えの基本は、「一生懸命やる人には大いに報い、そうでない人には少なく」
というものが多いのです。そしてその額は「現実に合っている」ことが多いのです。

それに加えて…
・社内の納得性
・将来の遡及性
を考慮して、時代に合った柔軟性のある退職金制度を作成させていただきます。

思わぬ退職金の活用

パートタイム労働法が改正され、いわゆる「パートさん」にも労働条件を明示し、書面化し、また将来への希望を持てるような人事組織にするということが義務化されました。

しかし大多数の社長さんは、そんなことは問題じゃないよ、また手間だけが増える余計なことをしてくれたものだ、とお考えかもしれません。

そりゃそうでしょう。パートさんに労働条件をハッキリさせる、人事制度を整える、ということでは、会社で扱う紙の量が増えるだけで、アクションを起こさなければ何も変わらないからです。

社長さんはパートさんにキッチリと長期間定着して働いてもらいたいのです。それさえできれば何も言うこともないし、余計なカミも必要ないでしょう。

そこでパートさんに勤続してもらうための手段として

「パートさんにも退職金制度を上げよう」ということを弊事務所は提案します。

「そんなことをすれば既得権として業績が上がらなくても払わなくてはならないではないか」と言われるかも知れませんが、給料一ヶ月分とか、そんなに大げさに定める必要はないのです。

定額制の数万円で結構です。またそれを5年勤続で支給するか、10年かというのは会社さん次第ですが、重要なのは、退職する時期や原因によって係数を掛ける、ということです。

つまり勤続10年で7万円、ということならば、勤続5年で退職ならば0.6掛け、悪いことをして退職ならばその程度によって0にもできる、という感じです。

一生懸命働いて成果を出したというのは結構ですが、多くの中小企業の場合は勤続年数の少なさ、
定着率の少なさに悩んでいます。

長年働いてくれた方、成果を挙げた方には惜しげなく報いたいというのは、異論のないところでしょう。

それをしっかりリスクのないように明文化して、定着率の向上に一役務めさせてはいかがでしょう。

賃金・賞与に代わる処遇制度

60歳から65歳に定年年齢の段階的な引き上げに伴い、その経過措置として、定年年齢以降の処遇は雇用条件を落とす目的での再雇用が主流になっています。しかしでは60歳から引き上げられた分は、何となく会社にいればいいのか、これは会社にとって問題ですし、本人にも余り良くないことのように思えます。

残り5年間くらいをどう過ごすか、インセンティブはどうしたら良いかは、成果主義も良いでしょう。しかし若い者と一緒になって成果を挙げるというのは、年配者ならそれなりのやり方があって、同じ基準で評価するのは難しいです。

そこで挙げたいのが「第2退職金制度」です。

通常、再雇用者には退職金がないのが普通です。しかし、条件を下げたとしても、何らかの形で会社に貢献してくれた人には、退職金という形で報いてあげたらいかがでしょうか。若い人に退職金ハズムぞと言っても、ピンと来ませんが、再雇用者にとって、老後の蓄えが増えることは望ましいことに違いありません。

注意すべきことは、
○本来の退職金との区別をきちんと図ること。制度が複雑にならないようにしましょう。
○評価制度と連動させること。何のための退職金なのか、制度の目的をはっきりしましょう。

退職金は税制上も優遇され、また保険料もかかりません。ボーナスに保険料がかかる今、最後の社会保険料の聖域といえるでしょう。これをインセンティブに活用しない手はないと思います。

ポイント制退職金制度

今までのような、基本給連動型の退職金ではなく、成果の「ポイント」に基づいて支給しようという退職金のことです。基本の計算式は、
(勤続中の地位ポイント+勤続年数ポイント)×ポイント単価×退職事由別係数
です。
その設計の手順は、

1、 モデル退職金表(年齢と勤続年数による)
順調に昇進・昇格した場合のモデル昇格年数を計算します。さらに各地位での付与ポイントを設定します。ポイント単価は10,000円が普通です。勤続年数ポイントは従来の退職金制度と合わせたい場合に設定します。自己都合退職の場合は、支給額を減額します。
2、 移行時の既得権の算出と経過措置の設計
退職金制度を初めて設計する場合は要らない措置です。旧退職金制度がある場合は、旧規定の金額をポイント換算し、既得権として保証します。
3、 退職金規定の整備と企業年金の設計変更
制度の設計が完了しましたら、退職金規程の整備を行います。適格退職年金制度を導入されている場合は、その移行と廃止、生保会社などによる外部積立を行っている場合には、制度変更を行う必要があります。