賃金制度作成・改訂はどう行いましょうか?

改訂の流れは一般的には以下のようになります。

① 御社の経営理念もしくはポリシーをお聞きいたします。
ある会社は、しっかり分析させていただきます。
ない会社は、多くの会社の例を山ほどご紹介いたします。

② 御社の労務診断をいたします。 

・賃金規程、就業規則、等 各種規程をお預かりいたします。
社員就労実態に関する調査をさせていただきます。
・その他お給料に関するお話、社長さんの思いを聞かせていただきます。

③ お預かりした資料に基づき労務診断書をお出しいたします。 
労務診断書」は賃金とその周辺の資料に基づく総合分析です。「賃金体系の変更について」「個人別賃金明細一覧表」等を含みます。なぜ変更するのか、具体的にどう変更するかの分かりやすい資料です。

④ 就業規則、賃金規程、雇用契約書の改訂をいたします。
・「賃金に関するご通知」等の労使に納得の行く説明をいたします。
・各規程に矛盾のないように調整いたします。
賃金・賞与の査定表を作成いたします。

ご不明な点がありましたら、いつでもご連絡ください。
以下はその他のコンサル内容の一部です。
退職金制度改訂のやり方

経営理念の分析

経営理念の一番の効果は何でしょうか?それは「定着率を高める」ということに尽きます。

優秀な人材が中途退社するもっとも多い理由は「ここにいても成長がない、将来性がない」ということです。経営理念がたとえ漢字の2字熟語だったとしても、ないよりははるかにマシです。理念があれば、例えば以下のような施策を講じることができます。

ヒトを大事に、定着率を高めたい : コミュニケーション規程や手当を新設する、誰にでもわかる人材育成・評価の仕組みを作る。

優秀なヒトに成果主義を : 教育方針を明らかにし、これをクリアすればこれだけの報酬と明記し、将来の昇給状態も明らかにする。

年功序列ながら、成果主義も入れたい : バンド式の幅のある昇給制度で、ある程度年功を尊重しながら、成果も考慮できるようにする。

こんな感じです。定着率や成果主義というのは、理念の具体化ですが、それをしっかり示して具体化することで、社員の信用を得ることが可能になってきます。

経営理念の策定

会社を存続させるには、目標や理念が不可欠です。ヒトを使い続けるには、将来性や教育を考えねばなリません。その考えのモトになる理念です。ただし難しく考える必要はないのです。

将来これくらいの会社になりたい、社員とこういう関係を築き、こういう社会的な使命を果たす会社になりたい、といった近い目標で良いのです。

しかも社長さんが自分の言葉で考える前に、他社のものを参考にしてみましょう。「イイのがあった!」と言うのならそれを持ってくれば良いですし、「何だ、大したことがない」と思えば、すばらしい理念が創造できるでしょう。

理念はこれからという組織は、まずは多くの会社の理念に当たってみることです。多くの例をいくつでもご紹介いたします。

小学生でもわかる査定表

当事務所の査定表は独自のものです。中小企業は査定表がなくても査定しています。その「気持ち」を汲んで、社長さんの望む評価の本質を踏まえて作成しています。その特徴は以下の通りです。

○ 自己申告なら○×をつけていません。口頭では言いますが、きついことは言いません。
○ 年数や職位などの期待に対する評価です。 
○ 小学校の通知表が最も良いのです。高校を出た18歳のヒトに分かる日本語で。

○ 必ず紙一枚で表示します。相対評価・絶対評価というのはナンセンス。
○ 目先の人間関係に追われないように。社風は前向きに仕事のことをいつも議論するムード。
○ 人間関係重視になること。小学生でも分かる擬態語で。

○ 幹部が手空きになることが必要。管理職は個人の数字で見ません。
○ 厳しいときは社長に分かってもらっている、という意識が大事です。
○ 定着の悪い会社は最初からメリハリ付けず、一律という考えも悪くない。

製造業、サービス業をはじめとして、営業職、事務職など、業種・職種を問わず、さまざまな形の分りやすい査定表を取り揃えております。

賃金に関するご通知

従業員の方に賃金改定を納得していただくには、合理的なおかつ言葉を尽くした説明が必要です。そのための説明書です。内容は以下の通りです。

1、どのような体系に変更するのか?
「支給目的を明確化し、かつ能力と成果、及び管理監督責任をより一層重視する体系」というような具体的なスローガンを掲げます。

2、減額もありうることを明記。
従来の賃金は減額しないよう配慮することを踏まえ、増減する手当はどのようなものか説明します。

3、従来の手当、変更後の手当を明示。
割増賃金や特別調整などの明細も明らかにします。

4、代表取締役・従業員の署名捺印を行います。これで契約書となります。

休日の変更等も加わる場合は「賃金ならびに休日等に関するご通知」となります。
上記のフォームに休日の項目を加えたものとなります。

賃金体系の変更について

変更の目的・趣旨、さらに具体的な運用等を文章で説明したシートです。
おおまかな内容は以下の通りです。

☆変更の目的・趣旨
管理職、営業従事者、契約社員、事務職など分野別に説明。手当などの改廃など、文章で説明します。

☆現状の基本給、各種手当
具体的にどう改訂するのか説明。変更案と残業対象者の基礎となるものも明記します。

☆管理職・役職手当の目安表
執行役員、所長や主任にいたるまで下限と上限を示します。

☆中途採用者の基本給の目安
18歳から35歳までの基本給の目安を示します。36歳以上は個人別に決めていただく前提です。

☆今後の昇給時の基本給、各種手当への加算方法
管理職、役職者(係長・主任)、それ以外の一般社員に分けて示します。

個人別給与明細一覧表が「数字の表」ならば、こちらは「文章の表」です。
文章で理解していただくことを主眼としています。

個人別賃金明細一覧表

従業員の方の賃金一覧表のうち、現状を左側に、改定案を右側に示します。
その一例は以下の通りです。実際はエクセルシートです。

男、年齢53歳 勤続22年 役職:リーダー

基本給…396,300→351,300      役職手当…35,000→0
家族手当…15,000→15,000      所定内賃金…446,300→366,300
管理職手当…0→90,000     合計…446,300→456,300

このような感じで、給与一覧表の並べ替えを行ない、見ていただきます。
さらに課長モデル、部長モデルなどの「相場」と見比べる表もお付けいたします。

合計2種類の表で御社の抱えている問題と、未来に向けての目標が見えてきます。

賃金体系の変更について」が「文章の表」ならば、こちらは「数字の表」です。
見える数字で理解していただくことを主眼としています。

労務診断書

労務診断書は賃金以外の総合的な諸問題も含めた全体の診断書です。
各社各様ですが、一例を示しますと以下のような内容となります。
1~5は全部でA4用紙5枚ほどの内容の文章です。6,7は表とグラフで各2枚です。8は1枚です。

現状分析と今後の課題
1、はじめに : 御社の賃金規程のいいところ。
2、大きな問題点 その1 : 賃金体系に大きな問題箇所、改善をお勧めしたい箇所がある。
3、大きな問題点 その2 : 就業規則の懲戒規程に不備な部分が多い。
4、大きな問題点 その3 : 就業規則の休職規程の内容が不十分である。
5、その他の問題点 :  ○採用手続 ○過重労働 ○育児・介護休業規程 ○賞与 ○退職金
6、賃金体系の変更について
7、個人別賃金明細一覧表(並べ替え、モデル対比)
8、基本給分布図のグラフ

これに基づいて御社でやっていただいても構いませんし、当事務所で各種規程の改訂等請け負わせていただいても構いません。いずれにせよ、御社のご要望の最善を考えたご提案をさせていただきます。

社員就労実態に関する調査

賃金そのもののお話の前に、社内の現実的な実態を簡単にお聞き取りいたします。
質問は3分野あります。その一部をご紹介いたしますと…

職場背景
1、現在部門内に潜在する労務問題また耳にする不満がありますか?
2、その広がりの状況 : 特定の個人のみか、特定の階層か?
3、その問題の原因及び対処 : 容認か、放置か、発信済みか?

定常的(異常時は除く)就労の実態
1、社員の定常的な出社時刻 : 半数が揃うのは○時○分
2、始業前体操、朝礼 : 平均的な参加率○%
3、休憩のとり方 : 自由度はあるかないか?

直近の実勢残業
1、兼務役員・事業部長を除く年俸対象者 : 繁忙閑散平常期の平日、休日
2、課長・所長(代理含む)
3、営業職一般男子

全部で30項目ほどです。

残業対策の本質

残業の抑制に「割増賃金」最低基準を引き上げへ

この「時間」を元にした労働能率の考え方、何とかならないものでしょうか。そもそも、残業手当の支給を多くして、残業が減るという考えは、企業が支出する金が増えるから残業を減らすだろうという非常に他力本願で、希望的観測に満ちた思考法です。

残業代を増やさないといけない場合、企業はどうするでしょうか?
1、残業を減らす
2、残業させないで仕事をさせる方法を考える

大部分が2に行くことは自明の理です。これは持ち帰り残業や、「証拠がない」と開き直る企業姿勢につながってきます。つまり、企業をわざわざ不正に追いやることになるのです。

日本の労働力の強みは、研究熱心に仕事を趣味にしてしまう点にあります。その結果、中国にも追随できないような高い職人技が編み出されるのです。こういう貴重な労働力に、過労死しないで仕事を満足にしてもらうため、経営がなすべきこととは、

残業代を払うことではなく、なぜその仕事をするのか、仕事をすることでどういう展望が広がるのかという未来を、指し示して公開する事だと思います。つまり、「生きがい」の構築です。

これは時給に換算できません。構築してもそのこと自体は利益を産みません。しかし将来的には大変な価値を生み出す元となることは確かです。また、これまでもそういうもので日本は価値を産み出して来たのです。

生きがいのある仕事は、責任感だけ、おカネだけの動機よりも10倍100倍の力を発揮します。それが集団で行使されれば、天下に怖いものなしです。

現在の労働問題は、このヤル気や生きがいというものを強引におカネに換算しようとしてきたところにあります。本来生きがいにおカネが付いて行くものなのに、おカネに生きがいが付属となると、人間そう持つものではありません。おカネ以上の仕事をしたときに、精神が付いていけなくなってバタンキューでしょう。

政府には、残業代を単に上げるというような労使ともに困る姑息な手段を弄さず、気持ち良く仕事ができる中身をチェックする機能の付加を義務付けて頂きたいです。会社の閉鎖的な雰囲気は、ヤル気の疎外になります。例えば社労士を1社1人必ず雇うとか(手前ミソですが)そういうことをまず定めて欲しいなと思います。

定年制廃止の代償

全国一斉に日本マクドナルドユニオンへの組合加入を呼びかける

日本マクドナルドでは以前、定年制を廃止しました。その結果、84歳の従業員がクローズアップされたりしたこともあって、他の企業に先駆けて、こういう制度を導入することは、良い事だと思っていました。

しかしそんな良い企業にどういうわけか、以下のような話が出てきました。

このニュースが出た後、店長とアルバイトを対象とした同社初の労働組合「日本マクドナルドユニオン」(200人)を、結成したとの発表がありました。

結成した理由は、以下の通りです。
○2004年:店長職の定期昇給を廃止
○2006年:定年制廃止を含め、能力主義の給与体系が導入され、24時間営業が拡大し、残業代の未払いが多く発生。

急激な労働条件の大幅な変更により、店長他、正社員、アルバイトなどの働く側との摩擦が増えているようなのです。

この組合を結成した委員長は、理由を以下のように述べています。

「売り上げ至上主義のため、長時間労働を強いられ、多くの先輩や、同僚が、退職した。こうした現状を、社側に伝える必要がある」というハナシです。

店舗をまとめたエリアというものがありますが、エリア間で助け合い 運営を行うというサポート体制が整っていないようです。店長、コンサルタントの裁量によって労働環境に格差が起こるという現状があるようです。こうなるとあるところはワンマン、あるところは労基法無視とテンデバラバラになるのも頷けます。

なぜ同じマックなのに「ユニオン」なんだ?と疑問に思いましたが、これは横のつながりの同業組合なのです。エリアというものは別会社のような扱いのようです。

こういう職場はアルバイトで持っている先入観がありますが、店長や正社員の方は考えてみれば異常に忙しくなるでしょうね。定年制廃止がカムフラージュに使われると見た第一線の方々が危機感を抱いて組合を作ったに違いありません。

そもそも小売店では、よく働いてくれれば何歳でも良いという考えがあります。先入観に捕らわれない良い考えなのですが、なにとぞ取替え可能な将棋のコマという考えにだけは転換して欲しくないものです。

諸手当の考え方

給料は基本給+諸手当という図式で表されることが多いと思いますが、どれを基本給にして、どれを手当にするということを迷われる会社さんも多いと思います。手当にする給料の基準は…

1、 能力や貢献度、役割の大きさ「以外」のものを手当として考える。例えば、職種(営業や事務)や、役職、扶養家族、通勤などの状況について。
2、 要は、動きのあるところについて、一定の賃金を支給する場合に手当にするということ。基本給では削ることは難しいですが、手当は、役職を外し、その職務に付かなくなれば当然付かなくなります。ノーワーク・ノーペイの原則ですね。
3、 時間外手当の代替として考えます。事業場外みなし労働時間制を適用し、営業手当を支給している会社があります。つまり、みなしだから10時間働いても8時間しか働いていないことになるから、その代わりとして他職種とのバランスを取るために支給するというものですね。
そして、個別の手当の考え方は、

○ 役職手当:職責に見合った水準と、時間外手当の代替になっているかどうか。「課長になって給料が下がった」では困ります。
○ 職務手当:「キツイ、キケン」な職務に支給します。
○ 家族手当:共働き世帯の増加により、会社の考え方により、対応が真っ二つに分かれます。配偶者に関しては廃止することが多いですが、教育手当は支給されることが多いです。支援が必要なときに手当を支給すれば、定着率の高揚にプラスになります。
○ 住宅手当:東京近辺では住宅手当の支給が求人活動にプラスに働くことが多いのです。しかし合理的な支給基準を設定することが難しいので、後に無駄な支給にならないような配慮が必要です。
○ 精勤・皆勤手当:社員の出勤奨励を目的としています。しかし年次有給休暇を認めれば、あまり存在意義はありません。

社員から見れば、手当の多い会社は給料の起伏の激しい会社、会社から見れば、手当が多ければ、必要に応じて給料を増減できる選択肢が増えるというところでしょうか。

賃金制度、どう変えるかのベンチマーク

どこの会社さんでも、毎年自動的に賃金が上がる仕組みはやめたいというのと、公平な貢献に対して適正な報酬を支払いたいという要求が主でしょう。それを達成するには、
○ 時間軸中心の賃金制度→貢献度軸中心の賃金制度
への変貌を心がけるべきでしょう。

問題は能力と貢献度の、賃金への落とし込みに問題があり、意欲を削いでいるという企業さんが多いのです。ですから、賃金改革には、まず、「賃金改革にはどういう目的があるのか」というコンセプトが必要です。

どういうものが良いかというと、

これは「人件費の削減」などという後ろ向きなものではなく、
○ 正直者がバカを見ない制度。
○ 貢献度に基づき、成果を挙げた者が適切に報われる制度。

というようなものでいいのです。この基本コンセプトを達成するには、どうするか、という過程が大切なのです。もちろん100%達成できれば、それに越したことはないのですが、たとえ能天気でも、ものすごく楽天的なこうあってもらったらという願望を素直に表せばいいのです。

そのコンセプトはあってもせいぜい3か条までです。1か条ならなお良いですね。要は分かり易いということが重要なのです。

有給休暇管理簿のすゝめ

fb49d404.JPG有給休暇というものは非常に強い強制力を持っています。一定の時期勤続して8割以上出勤していれば当然発生する権利で、請求も許可も要りません。そのことは結構働く人も知っていて、退職間際にまとめて取られて狼狽する社長さんもいらっしゃいます。

だからしっかり有休については管理簿をつける事をお勧めしているわけですが、これがなかなかなさっていないんですね。「そんなことは頭に入っている」と言う事業主さんもいらっしゃるわけですが、有休の規則というものもなかなか面倒で、それを導入すればうまく有休管理ができるのに、おやりになっていないと。

例えば、

○労働者には「時期指定権」があって、労働者の好きな休暇を取ることを予告できる。
○一方事業主には「時期変更権」があって、業務の繁忙を理由に「別の時期にしてくれ」と言うこともできる。
○有休を夏休みや冬休みの前後にいっせいに取らせると、新入社員には休業手当を支払う必要が出ます。これを回避する方法を取ると、また管理の手法が必要です。
○付与された年度に取得しなかった有休は繰越があります。古いのから消化するか、新しいのから消化するか、実は企業にとって大問題であるはずです。

このように、有休には専門家によるアドバイスと、継続的なしっかりした管理が必要です。有休でタダ働きの退職金、とならないように、対策をきちんとしておきましょう。

場合によっちゃヤバイこの制度

時間外労働についての残業代の続きです。制度を導入したのは良いけれども、場合によっては違法、ではたまりません。

労働基準監督署の基準で<場合により違法となるもの>は…

残業手当定額払い型
…定額が算定された割増賃金額を下回る場合に違法。残業の有無に関わらず毎月定額の割増賃金を支払うが、あらかじめ定めた残業手当しかし払わないもの。
自主申告自己規制型
…会社の関与の程度により違法となる。社内の雰囲気に反応して自己の意思により申告しないことまたは会社が認めた範囲内で申告を行うもの。
管理・監督者拡大解釈型
…管理・監督者の範囲を任意に拡大解釈し、例えば係長クラスにも支払を行わないもの。

ではこれに対する合法な手段と対策は…

残業手当定額払い型
…毎月タイムカードなどを突き合わせ、正確な額を払う。
自主申告自己規制型
…「労働時間適正把握基準」「賃金不払残業解消指針」に基づく客観的資料と突き合わせる。
管理・監督者拡大解釈型
…見合う権限および手当の支払等の管理・監督者にかかる通達に則した対応が必要。

まあひと言でいえば、こちらの都合も少しは考えてくれよ、という内容です。やっぱり残業手当の削減には変形労働時間制あるいは裁量労働時間制の導入が最有力でしょう。

時間外労働―何が目をつけられるか?

時間外労働は、日本の労働慣行において、現在残念ながら不可欠の要素になっています。会社もこれに対し、残業代を払わなくて良いようにいろいろ対策を打っているようですが、制度を作ったのはいいものの、違法な制度を作っちゃった、ということが数多くあります。

労働基準監督署という役所は、労災の管轄の役所です。ハローワークが雇用保険の管轄であるのに対し、「署」という名前は何か不気味です。警察署の「署」と同じように、立ち入って検査したり、告発したりという権限があるのですね。その監督署が、時間外労働対策の「制度」についての指針を出しています。こういうのは違法な制度だよ、という種明かしです。

何が何でも違法、と場合によっては違法、の2種類があります。ここでは”何が何でも違法”について解説いたします。

<制度自体が違法であるもの>

上限設定型
…月間30時間等の一定の時間外労働の限度時間を設定し、それを超える時間外労働に対する支払いを行わないもの。
足切り型
…月間30時間等の一定の時間外労働の限度時間を設定し、それを下回る時間外労働に対する支払いを行わないもの。
中抜き型
…月間の一定の限度時間に第一ラインと第2ラインを同時に設定し、第1ラインを超え、第2ラインまでの時間外労働に対する支払を行わないもの。
自主申告規制型
…自主申告制を運用するに当たり、明示または黙示で。申告しないことまたは会社が認めた範囲(上記の各タイプの併用)内で申告することを強制するもの
管理監督者深夜割増不払い型
…法定の管理・監督者に該当する場合には、深夜業に対する割増賃金の支払いが適用除外すると間違えて、深夜業を行わせても支払を行わないもの。
年俸制不払い型または月給制不払い型
…年俸制または月給制の場合には、時間外労働に対する割増賃金の支払を要しないと間違えて、あるいは年俸または月給額に組み込むとしながら、組み込まれた割増賃金額を明示せず、支払わないもの。

これを見ると、残業代をピンハネするか、法律を知らないかで、違法と判断されることが多いことが分かります。残業代を減らす方法は他にもあります。労働者にとっても残業させればいいというものではありません。しっかりと制度をつくり、効率の良い労使ともに満足な残業をしましょう。

成果主義の後、なぜ賃金改革か?

成果主義は機能しない、では年功序列に戻すかというと、それも憚られるでしょう。ではどのように変えれば良いのか?何が必要なのか?3点ほどあります。

1、人件費に当てる全体額の管理
2、年功賃金はやっぱりダメ
3、貢献度に合った支払ルールはやっぱり必要

ということです。「ダメ」「必要」といっても、根っからそれを否定するものではなく、良いところは会社によって取り入れましょうということです。では個別にどうすればよいのか検証していくと…

1、人件費に当てる全体額の管理
右肩上がりの経済であれば良いのですが、これからは沈んだりという場合も考えなくてはならなくなります。そういう時代の中で、給料が上がる前提の規程は命取りになります。今年の売り上げはどれだけで、うちどれだけ人件費に当てられるかという管理のことです。

2、年功賃金はやっぱりダメ
1のような制度を作ると、年齢給や勤続給など、自動的な昇給制度はなくなっていくでしょう。高度経済成長時代と比べると、若い人が少なくなり、年配者が多くなるという構図は、年功制度そのものを崩壊させます。しかし、その会社にあって長年やっていく、という長期的な教育の意味では、安定的な賃金の存在もやはり必要です。

3、貢献度に合った支払ルールはやっぱり必要
「貢献度」といっても難しいのです。営業で一件契約を取るにも、本人の働きの他に上司の判断、事務や家族など裏方のサポートがあった筈です。それにどう報いていくかということが重要なのです。日本はこれまで、学歴や派閥にこだわらない技術力で世界を凌駕してきました。そういう良さは、周りの人間環境によってもたらされた部分も大きいのです。

これからの賃金制度変更のための基本方針は、
○ 給料は上がるだけでなく、減る場合も当たり前
○ 年功賃金は生活のための最小限
○ 成果賃金は周りのサポートも考慮

とまとめられます。