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特定社労士の「技術」

「技術」とは、いかにして円満な解決に持っていくか、という術です。そのためにはこれまでの労働判例の考え方を概括して加工し、新しいあっせん方法のやり方を考える必要があります。いくつかの考え方があり、理解する必要があります。

①賃金はなぜもらえるか
・法規説 : 賃金の支払は規定であり、雇用契約締結のときに定まる。
・合意説 : 当事者の合意によって直接発生する。「約束は守るもの」という考え方。
の2つがあります。民事裁判実務では「法規説」が採用されています。ここから日本の法曹養成の基礎理論たる「要件事実論」に繋げることによって、日本国内の社会の法律スキルが身に付きます。しかしこの要件事実論だけでは視野が狭いと言います。「労働事件に要件事実はあってなきが如し」です。その時点での要件事実や、法の要件事実の理解だけでは失敗します。

②真実をつかむ技能
良心というのは、社会内で約束を守ったり、ウソをついたりしないという当然の約束事ですが、これに基づかない規定を遵守する集団もあり、また、特殊な世間体を基準とする業界もあります。それを踏まえて以下のような段階を踏みます。
1、事実があったか
2、論理的証明ができるかどうか
3、その説明に証拠があるかどうか
加害者、被害者、関係者から事情を聞きます。しかし世間体に基づく解決心理が出たときには、隠ぺい工作が出てくるので注意します。たとえ依頼人が不利になっても、依頼人を裁いてはいけません。あくまで依頼人の味方を貫きましょう。

③あっせんは訴訟とどう違うのか
人事労務管理方針の目的に合わせて、研究することによって訴訟との差別化を図れると言います。経験のみでも技能の向上は図れません。

④労働経済
労働者側の主張の底流に流れるものです。現在でも意外に浸透しています。
労働価値学説:世の中の価値を作るのは労働者だ!という説。
搾取と略奪:搾取は、労働した成果と賃金は等価交換されないという説のもと。収奪は経済状態ではなく、強制や誘惑その他の経済以外の手段で奪い取られることをいいます。
労働と労働力:「力」がつくと、ただ働くことに能力がプラスされます。労働力は売買の対象になりますが、労働は売買の対象になりません。
賃金とは:=生活+住居+次世代の育成+研究+技能習得までを含む「再生産費用」です。この相場は需要と供給で決まります。