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特定社労士の実態(下)

労務相談の被相談者としては、一番の態度は、「今日は話を聞かせてください」ということです。反論は絶対にダメなのです。なぜかというと、感情と建て前は一致するわけがない、ということです。みんな格好いいことが良いに決まっていますが、気に入らないという感情はそれより強かったりします。

上手に聞いてあげるということはどの労務問題でも同じです。そのためには事前に会社と「ここまで私に権限もらえますか」ということを相談して、発言の自由を確保しておく必要があります。会社のためにならないことを言うというハッタリもあるでしょう。感情は理屈を出しては収まらないのです。

とにかく聞く能力というのはスピーチの一方的な能力とは別のようです。

また、相談の際、相談者の言うキーワードというものもあります。
「本当はイヤだったんです」 : そのときは同意していたのに、ここへ来ると自分の立場を良くするため否定する態度。
「誠意を見せろ!」 : これが一番怖いです。感情を代表するセリフ。これが出たら絶対論理で反論してはならないのです。「全て」肯定で聞きます。

相談者は意外に話してしまえば、結構前後の論理に矛盾が出たり、自分はなぜこういう問題を持ち出したのかなど、整理がつくものです。そこを「うまく」冷静な結論に持っていくことがあっせんの醍醐味かも知れません。なにしろ裁判で争えば、法的には労働者が強いのですから確実に負けます。

相談者は感情論をまとめて攻めてくる場合が多いのです。これを1つ1つ積み重ねて各論化して解決するという辛抱強い対処が必要です。

労務問題は一方的に良い方が悪い方を裁くとならないのが、難しいところです。判決書もありませんし、カネで解決するならしたいところです。しかしそれでは根源は何の解決にもならないのです。「あいつがゴネてこれだけもらったのならオレも」ということになります。そんなお金は払えません、ということであれば、時間をかけるしかないのです。

まあ何もやったことのない新人がこの仕事でやっていくには経験しかないようです。ここまで行くと法律論ではなく、感情論なのですから、学ぶことといったら心理や応対のノウハウのようなものでしょう。社労士なら判例の知識も武器になりますが、1回目の感情が高ぶって信頼関係のないところでは出さない方が良いようです。