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民法の基礎事項

民法はあっせんの仕事を行うに当たって重要です。労働法に規定されていないコトは民法の規定によるものだからです。むろん、特定社労士は学問上の解説をするものではありませんから、実践的な内容が求められます。関係する主な分野を挙げますと、

1、契約法 : 日本の民法では口頭契約が有効。つまり、事実関係によって雇用契約が成立します。
2、不法行為法 : パワハラ、いじめ、嫌がらせなどの説得材料としてこの概念が用いられます。
3、代理 : 本人が意思表示下のと同様に扱われる。使者は伝達しているだけ。
4、時効 : 賃金支払と災害補償(労災除く)は2年、退職金は5年でほとんどを占めます。
5、信義則上の義務 : ウソ、だまし、抜け駆け、ペテンにかけないということです。
6、権利濫用行為 : 権限がないのに、あたかも当然の権限を持っているように見せかけること。
7、公序良俗 : 社会的妥当性のこと、「いつの時代の契約ルール?」というような感覚。

があります。ではこのうち、ここでは1と2について詳査してみます。

1、契約法
契約の成立は申込みに対する承諾があって成立する想定をしています。しかし日本の民法では口頭契約が有効です。労働契約書などは後の証拠になるということと、契約履行の心理的強制の効果があります。就業規則などの兼ね合いで、労働法の規定があります。民法のみでは混乱するからです。

労働契約に該当すれば、雇用契約は合意成立でなく、事実関係によって成立します。仕様従属性がなくても、経済従属性があれば契約が成立します。つまり、契約法の概念が通用しないのです。

民法の労働者の想定は明治17年ですから、日清戦争後の産業革命以後の近代的労働者の想定ではありません。ですから雇用契約の多くの事項では、民法の規定は適用されないことが多いのです。

2、不法行為法
紛争解決方法としては、損害の填補や公平な分担を実現するための制度として取り扱われます。労働条件、職場環境、職場人間関係、教育育成、昇進昇格、事業主手続不作為などが今後、不法行為として数多くクローズアップされてきます。これらのことは、労働裁判機能の欠陥により、不法行為事件として余り出てきませんでした。

不法行為の社会経済秩序維持機能 : 他人からの故意または過失によって、権利の侵害を受けた場合、その損害賠償を加害者に求めるもの。消滅時効は短期で3年、不法行為時点から20年となっています。

成立要件
1、就業規則、労働基準法、男女雇用機会均等法、安全衛生法などに違反した場合。
2、36協定の無協定状態での時間外休日労働、その他の協定状態での賃金からの控除
3、従業員代表不在による従業員代表との協定、就業規則変更、退職金減額、労働条件低下
は、不法行為が成立します。

不法行為の世界観 : 「過失責任主義」(加害者の行為に故意・過失の主幹直接的責任がなければ損害賠償義務がない)にある。故意・過失がない結果・原因責任主義で、間接的な加害者を見逃す、ということはしない。

不法行為の態様
1、刑罰法規違反行為 : 不法行為の上で、違法性の強いチャンピオン
2、取締法規違反行為 : 行政法上の違反
3、権利濫用行為 : 労働問題では「職権濫用」といわれている
4、公序良俗違反行為 : 特定の規範がないので、侵害行為の方法を重視し、違法性を導く一般条項として使用