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従業員のヤル気を喚起する”1人当り粗利”

”1人当り粗利”とは聞き慣れない言葉ですが、会社の業績に関する一定の情報公開が必要という意味で、どういう情報を公開すべきか?という疑問に答えたものです。貸借対照表、損益計算書をワッと見せても、大多数の従業員の方はポカンとしているばかりでしょう。どういう情報を見せるべきでしょうか?

当たり前ですが、社員の頑張りなくして業績向上はありえません。その社員の頑張りを引き出す上で、会社の財務情報の公開も必要かと思います。会社の業績について、まったく説明せずに、それでいて「もっと売れ!」と要求する会社がありますが、社員にしてみればピンとくる話ではありません。

未上場のオーナー会社の場合、決算書を社員に公開しているところは稀ですし、そこまでする必要はないかもしれません。だって、例えば「社長の役員報酬をいくらにするか?」などという点は社員に知らせたくないし、知らせる必要もないからです。そこで次の項目ぐらいに絞って情報公開した方が良いのです。(これは卸売業の場合です)

① 売上高    ② 仕入高
③ 人件費総額  ④ 一般経費

これは経常利益ではないか!といわれるかも知れませんが、この用語も社員に余りピンと来るものではないのです。また、経常利益は社員のガンバリ以外の要素も絡んできますので、指標としては適当ではないのです。

また、労働分配率という用語も良くありません。労働分配率は人件費÷荒利益で出ますが、人件費に役員報酬も含むからです。ではどのように経営情報を公開すべきでしょうか。

「1人あたりの粗利益」とは何でしょうか?

○ 「人件費500万円」をもって「社員1人」とみなす
○ 粗利益÷人件費(人数換算:500万円)=「社員1人あたりの粗利益」

 「粗利益」という概念はわかりやすいのです。製造業の場合は複雑ですが、卸売業とか小売業の場合は「売上高―仕入高=粗利益」という単純な算式で表すことができます。 

その公開の手順は以下の通りです。

☆ 「人件費500万円」をもって「社員1人」とみなす

なぜ500万円で割るのかというと、「人件費の生産性」をみたいがためです。
単純に「粗利益÷人数=1人あたり粗利益」では、
収入が低いヒトも高いヒトも生産性が同じということになってしまいます。
「人数」ではなくて「人件費」でとらえることで「人件費の生産性」を把握したいのです。

弊事務所は人件費=社員に支払った給与+賞与+社会保険料+退職金と考えています。平成19年国税庁民間給与実態調査によりますと、男女平均の年収は「437万円」となっています。これに社会保険料等を加えれば「500万円をもって1人と換算する」とは合うはずです。

☆「1人あたり粗利を増やせば昇給や賞与で報いることができる」と社員に語る。

例えば…
1、人件費500万円をもって社員1人とみなした。
2、前期実績で30人。
3、その1人あたり粗利は前期が750万円。後期は900万円で、前期比1.2倍。
5、そうすると後期は前期に比べ人件費を1人あたり年間50万円増やして昇給や賞与で報いることができる。
6、人の増員はない上で会社は3千万円の経常利益を計上できる。

このような算式で表せば会計の知識がない人でもすぐ理解できるようになるでしょう。つまり社員に通じる言葉で目標を示すことができるようになるわけです。