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仕事を価値あるものにする方法

ナイチンゲールのことです。彼女はクリミア戦争を通じて看護婦の地位を高め、敵味方の区別なく、すべての負傷者の手当をし、国際赤十字の創設に貢献しました。現在の看護師にとっても、その精神的バックボーンとなる人でしょう。

看護婦は下層階級の女性がおこなうどちらかというと卑しい仕事、召使いの仕事と見られていました。確かに、他人の血や膿に触れたりするし、下の世話も必要だし、伝染病がうつるかもしれないし、楽できれいで安全な仕事ではありません。ナイチンゲールは、上流階級のお金持ちのお嬢さんだったにもかかわらず、この仕事に誇りを持って取り組みました。

むろん、ナイチンゲールの偉大な人間性もあったと思います。しかしこれだけでは看護婦の職の地位向上にはならなかったかも知れません。何がさらに看護婦の地位向上に資したかというと、

「統計学」です。彼女は近代統計学の発展に尽くした統計学者でもありました。彼女はクリミア戦争が終わった後に、なぜ病院で兵士が死んだかを調べました。ナイチンゲールの努力にもかかわらず、戦争ではなく、病院の衛生状態が死傷者を増やす原因となったと分かり、彼女は10年間も寝込むようなショックを与えられたのです。

そこでイギリス陸軍を初めとした当局に陳情したのですが、現実を口頭で文章で訴えてもなかなか政府は動きません。そこで彼女は、統計を駆使して『鶏のとさか』ダイアグラムを作って、訴えたのです。その経験を基にした理系的な実証は政府を動かし、陸軍の衛生状態を改善しました。

この結果から見て、職業に愛着を持つには、単なる精神主義ではダメなことが分かります。職務を棚卸しし、理詰めで全職務を把握することで、初めて自分が何をやっているのかが分かり、そこに価値を見出すにはどうしたら良いかが分かってくるものと思います。