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「ほめること」の弊害

世の中「ほめる教育」がブームです。しかし世のぎすぎすした雰囲気は直りません。「ほめること」の長所は良く言われているとして、ここではその弊害を列挙してみます。

1、自立には明らかにマイナス:指示に従って動く受動的な存在を作りだします。「ほめられれば動く」ははなはだ受動的です。

2、評価漬けにする:評価の網で人間を覆い、主体性の芽を摘んでしまう。何でも「評価」「評価」では、利益を出す「評価されない行動」がなくなってしまいます。

3、意欲を削る:常にほめてやらないとダメな見掛けの意欲を大量生産してしまう。つまり、指示されないとやらない風潮を作り出してしまいます。

4、「面白さ」を感じられなくなってしまう:ほめられる仕事をしようと思っていると、評価の目ばかり気にして、仕事自体の面白さを感じられなくなってしまいます。

5、「居直り的」自信を付けさせてしまう:自信とは、謙虚さに裏打ちされた自分の弱点や限界を知った上での自分自身への肯定的評価です。しかし、、「居直り的」自信はほめられたから自信が付く、という底の浅い自己肯定です。基本的なマナーの欠如はこれが原因なことが多いです。

話は変わりますが、ナポレオンは数学が好きだったそうです。その理由は、

「足したり、引いたりするばかりでなく、掛けたり、割ったりすることもできます。間違いは許されない。出てくる答えは1つである」という点に感動したんだそうです。

ナポレオン流ですが、ここには良い点を取る、出世できるというような「褒められる」要素は入っていません。確かに他者の目を意識することは重要で、高い点を取れれば数学も面白くなるでしょう。しかし、他者と同じくらいに「自分がどう思うのか」考えなければ、ほめられなければ何もしない、恐るべき人間像が出来上がってしまうのではないでしょうか。