« 北条早雲の人事術 | メイン | 英雄も人に使われるべき »

放火魔の心理

NHK記者、放火で捕まる

24歳の男性記者だったそうです。こういう社会的地位もあり、頭も悪くなかった人が、どうして「自分で放火して119番した」などという行動に出たのでしょうか。

放火魔の心理に「他人と誰よりも真剣にコミュニケーションしたいヤツが目先の火事に満足してしまう」というものがあります。盗賊の論理に似ていますね。コミしたければコミすれば良いのに、生身の人間とせずに、代替行動として火事で済ましてしまうというものです。

記者は去年入社し、カラオケの盛り上げ役で、快活な性格だったそうです。NHKの雰囲気についての非難が寄せられていますが、私は「普通」のものだったと思います。入社して1年そこらは失敗もあるだろうし、叱責も激烈でしょう。組織人として誰だって通る道です。しかしこれがなぜ「放火」に至ったのでしょうか?

一言で言えば社会と職場のギャップですね。誰でも他人と笑い合って暮らしたいのです。しかし仕事の絡む人間社会はそうは行きません。厳しさ、気まずさ、恥ずかしさ、そういうものは当たり前ですが、そういうことを教えてやれる大人がいなかったのでしょう。NHKを組織として非難するなら、その点に尽きます。

上司は何やってたんだ、という非難には、「直接的に未然に防げなかったのか」という他に、「間接的に放火に行かない手段を取れなかったのか」ということも含まれます。

誰でもそうなるものなのに、彼の場合支えてくれるもの、あるいは相談するものがいなかったのでしょう。いや、NHKくらいの組織なら、あったかもしれません。でもそれは「相談のためのコーナー」であって、精神病院に行くような感じで、行きにくいものだったかも知れません。

放火以外にも「コミュニケーションストレス」を解消する手段はいくらでもあります。そしてそれを教えてやれるのは大先生でも、心理学者でなくても良い、気軽な普通の人で良いのです。そういう「普通の人」に社会の仕組みを教える重大な役割を与えるのは、昔なら自然にできましたが、今は、組織付けで任命しないと、言い換えれば”お上”の力が必要なのかも知れません。