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カタログデータというもの

日清戦争の黄海海戦(明治27年:1994年)のお話です。
以下のデータは日清の参加艦船の大砲の門数と速力(knot:ノット)です。
このデータを比べて、どちらが勝つと思いますか?
当時は大艦巨砲の時代、威力のある軍艦を持つことは、今日の核ミサイルに匹敵しました。

日本海軍
30㎝台砲3  20㎝台砲8 15~19㎝砲31 10~14㎝砲59 砲数101
平均速力16.3ノット 装甲7.5㎝

清国海軍
30㎝台砲8 20㎝台砲14 15~19㎝砲15 10~14㎝砲12 砲数49
平均速力15.6ノット 装甲21.1㎝

日本艦隊の長所は、
○速射砲が多い:1分間に6発撃てる、清国は数分に1発。
○速力が速い:海戦時、日本は10ノット、清国は7ノット
短所は、
○大口径砲が少ない:20cm以上の大型砲では日清1:2
○装甲が薄い:平均で日清1:3

で、清国艦隊は日本艦隊のそのまま裏返しで、長所が短所になります。
結果は清国4隻沈没、日本は大破が4隻。その後黄海の制海権は日本が握りました。
ということは、軍艦のカタログデータ以外の要素が勝利を導いたということです。

日本側の勝った原因は、上記の長所のほかに、
○艦隊運動(清国艦隊の周りをくるくる回って砲撃を加えた)が優れていた。
○指揮官の意思疎通がうまくいっていた。(清国側は逃亡した艦もあった)
○運が良かった(魚雷がそれた、など)

ここで目立つのは、指揮官(トップ)の意思疎通でしょう。いくら兵器が優秀で、兵隊が奮闘しても、トップが優秀でも、足並みが揃っていないと勝つことは難しいということです。

当時の清国は、兵隊からトップまで、十分な教育を受けた実力者が多かったのです。しかし皇帝はお飾りで、西太后が海軍の費用を私物化したりして、軍隊の機構自体がガタガタでした。日本は、与野党の政治の対立も、天皇が収めて一丸で戦争に臨みました。

つまり、カタログデータ以外の性能や動機付けの問題だったといえます。優れた資源、優秀な人材、これだけでは戦争に勝てず、組織の問題が大きく左右しました。カタログデータが間違ってなくても、戦争に負けることもあり得ると思います。