« 藤堂高虎の人事 | メイン | 一驚!一興!富士山面接 »

「煙突男」の時代

「煙突男」と言われても何のことか分からない人が多いでしょう。文字通り、煙突に登った男の話です。時は昭和5年、11月中旬の川崎の紡績工場。目的は労働争議の勝利のため(!)です。

高さ56mの煙突に登って6日間、食料や水は持参したものの他、差し入れられたものの、一度も降りずに仮眠は煙突の周りの小さい足場でとります。演説をし、散々当局を翻弄した上で労働者の大勝利を勝ち取り、煙突から降りました。見物人は最高で1万人にもなり、52日間にわたる労働争議に決着をつけました。

これ、実は労使紛争で労働者側が勝つための最高の手段なのです。利点を列挙すると…

○世間の注目を引く。宣伝効果は抜群!
○警官が上がってこれない。
○人を傷つけたり、会社に損害を与えることはない。
○真っ黒になってしまって何者か分からない。(笑)個人攻撃ができない。
○見物人が大勢集まる。当局は見物人の前で労働者に手荒なことができない。
○当時の昭和天皇が鉄道で近くを通り、「あれは何か?」と尋ねるとコワい。(笑2)

この「煙突男」もこういう戦術を取るだけの背景があったようです。
○肺結核で余命いくばくもなく、労働者のために尽くす一途さがあった。
○算数ができないと勉強してついに一番になるという負けず嫌いの一面があった。

さて現在の「労働者」はここまでやる自信と体力があるかどうか?「煙突男」は労働者側に雇われた工場外の人間でした。しかし今の”個人別労使紛争”の現実に比べると、スカッとしたものを感じるのは私だけでしょうか?