賃金・賞与に代わる処遇制度

60歳から65歳に定年年齢の段階的な引き上げに伴い、その経過措置として、定年年齢以降の処遇は雇用条件を落とす目的での再雇用が主流になっています。しかしでは60歳から引き上げられた分は、何となく会社にいればいいのか、これは会社にとって問題ですし、本人にも余り良くないことのように思えます。

残り5年間くらいをどう過ごすか、インセンティブはどうしたら良いかは、成果主義も良いでしょう。しかし若い者と一緒になって成果を挙げるというのは、年配者ならそれなりのやり方があって、同じ基準で評価するのは難しいです。

そこで挙げたいのが「第2退職金制度」です。

通常、再雇用者には退職金がないのが普通です。しかし、条件を下げたとしても、何らかの形で会社に貢献してくれた人には、退職金という形で報いてあげたらいかがでしょうか。若い人に退職金ハズムぞと言っても、ピンと来ませんが、再雇用者にとって、老後の蓄えが増えることは望ましいことに違いありません。

注意すべきことは、
○本来の退職金との区別をきちんと図ること。制度が複雑にならないようにしましょう。
○評価制度と連動させること。何のための退職金なのか、制度の目的をはっきりしましょう。

退職金は税制上も優遇され、また保険料もかかりません。ボーナスに保険料がかかる今、最後の社会保険料の聖域といえるでしょう。これをインセンティブに活用しない手はないと思います。

ポイント制退職金制度

今までのような、基本給連動型の退職金ではなく、成果の「ポイント」に基づいて支給しようという退職金のことです。基本の計算式は、
(勤続中の地位ポイント+勤続年数ポイント)×ポイント単価×退職事由別係数
です。
その設計の手順は、

1、 モデル退職金表(年齢と勤続年数による)
順調に昇進・昇格した場合のモデル昇格年数を計算します。さらに各地位での付与ポイントを設定します。ポイント単価は10,000円が普通です。勤続年数ポイントは従来の退職金制度と合わせたい場合に設定します。自己都合退職の場合は、支給額を減額します。
2、 移行時の既得権の算出と経過措置の設計
退職金制度を初めて設計する場合は要らない措置です。旧退職金制度がある場合は、旧規定の金額をポイント換算し、既得権として保証します。
3、 退職金規定の整備と企業年金の設計変更
制度の設計が完了しましたら、退職金規程の整備を行います。適格退職年金制度を導入されている場合は、その移行と廃止、生保会社などによる外部積立を行っている場合には、制度変更を行う必要があります。

諸手当の考え方

給料は基本給+諸手当という図式で表されることが多いと思いますが、どれを基本給にして、どれを手当にするということを迷われる会社さんも多いと思います。手当にする給料の基準は、
1、 能力や貢献度、役割の大きさ「以外」のものを手当として考える。例えば、職種(営業や事務)や、役職、扶養家族、通勤などの状況について。
2、 要は、動きのあるところについて、一定の賃金を支給する場合に手当にするということ。基本給では削ることは難しいですが、手当は、役職を外し、その職務に付かなくなれば当然付かなくなります。ノーワーク・ノーペイの原則ですね。
3、 時間外手当の代替として考えます。事業場外みなし労働時間制を適用し、営業手当を支給している会社があります。つまり、みなしだから10時間働いても8時間しか働いていないことになるから、その代わりとして他職種とのバランスを取るために支給するというものですね。
そして、個別の手当の考え方は、

○ 役職手当:職責に見合った水準と、時間外手当の代替になっているかどうか。「課長になって給料が下がった」では困ります。
○ 職務手当:「キツイ、キケン」な職務に支給します。
○ 家族手当:共働き世帯の増加により、会社の考え方により、対応が真っ二つに分かれます。配偶者に関しては廃止することが多いですが、教育手当は支給されることが多いです。支援が必要なときに手当を支給すれば、定着率の高揚にプラスになります。
○ 住宅手当:東京近辺では住宅手当の支給が求人活動にプラスに働くことが多いのです。しかし合理的な支給基準を設定することが難しいので、後に無駄な支給にならないような配慮が必要です。
○ 精勤・皆勤手当:社員の出勤奨励を目的としています。しかし年次有給休暇を認めれば、あまり存在意義はありません。

社員から見れば、手当の多い会社は給料の起伏の激しい会社、会社から見れば、手当が多ければ、必要に応じて給料を増減できる選択肢が増えるというところでしょうか。

賃金制度、どう変えるかのベンチマーク

どこの会社さんでも、毎年自動的に賃金が上がる仕組みはやめたいというのと、公平な貢献に対して適正な報酬を支払いたいという要求が主でしょう。それを達成するには、
○ 時間軸中心の賃金制度→貢献度軸中心の賃金制度
への変貌を心がけるべきでしょう。

問題は能力と貢献度の、賃金への落とし込みに問題があり、意欲を削いでいるという企業さんが多いのです。ですから、賃金改革には、まず、「賃金改革にはどういう目的があるのか」というコンセプトが必要です。

どういうものが良いかというと、

これは「人件費の削減」などという後ろ向きなものではなく、
○ 正直者がバカを見ない制度。
○ 貢献度に基づき、成果を挙げた者が適切に報われる制度。

というようなものでいいのです。この基本コンセプトを達成するには、どうするか、という過程が大切なのです。もちろん100%達成できれば、それに越したことはないのですが、たとえ能天気でも、ものすごく楽天的なこうあってもらったらという願望を素直に表せばいいのです。

そのコンセプトはあってもせいぜい3か条までです。1か条ならなお良いですね。要は分かり易いということが重要なのです。

成果主義の後、なぜ賃金改革か?

成果主義は機能しない、では年功序列に戻すかというと、それも憚られるでしょう。ではどのように変えれば良いのか?何が必要なのか?3点ほどあります。

1、人件費に当てる全体額の管理
2、年功賃金はやっぱりダメ
3、貢献度に合った支払ルールはやっぱり必要

ということです。「ダメ」「必要」といっても、根っからそれを否定するものではなく、良いところは会社によって取り入れましょうということです。では個別にどうすればよいのか検証していくと…

1、人件費に当てる全体額の管理
右肩上がりの経済であれば良いのですが、これからは沈んだりという場合も考えなくてはならなくなります。そういう時代の中で、給料が上がる前提の規程は命取りになります。今年の売り上げはどれだけで、うちどれだけ人件費に当てられるかという管理のことです。

2、年功賃金はやっぱりダメ
1のような制度を作ると、年齢給や勤続給など、自動的な昇給制度はなくなっていくでしょう。高度経済成長時代と比べると、若い人が少なくなり、年配者が多くなるという構図は、年功制度そのものを崩壊させます。しかし、その会社にあって長年やっていく、という長期的な教育の意味では、安定的な賃金の存在もやはり必要です。

3、貢献度に合った支払ルールはやっぱり必要
「貢献度」といっても難しいのです。営業で一件契約を取るにも、本人の働きの他に上司の判断、事務や家族など裏方のサポートがあった筈です。それにどう報いていくかということが重要なのです。日本はこれまで、学歴や派閥にこだわらない技術力で世界を凌駕してきました。そういう良さは、周りの人間環境によってもたらされた部分も大きいのです。

これからの賃金制度変更のための基本方針は、
○ 給料は上がるだけでなく、減る場合も当たり前
○ 年功賃金は生活のための最小限
○ 成果賃金は周りのサポートも考慮

とまとめられます。