フランスの少子化克服

フランスで出生率が上がった本当の理由

フランスは先進国が軒並み少子化の傾向なのに、出生率を反転させた稀有の国です。日本が1.3人も産まないのに、2人に届く勢いです。その原因をまとめてみると…

○ 育児休業制度の充実:子供が3才になるまで休業し、復職できる保証がある。
○ 育児手当の充実:第2子からは月7万2千円の育児手当支給。
○ 産後の「膣の緩み」対策に助成金。
○ カップルが基本単位として根付いている社会風土。
○ 年齢を知らない恋愛、夫婦でもデート。
○ 半数以上の第1子が「できちゃった婚」。

このうちどれが、日本でやりやすいでしょうか?

育児休業や育児手当の充実はできそうですね。カップルが基本単位として根付く、というのもできそうというか、もうできている感じもします。

「膣の緩み」対策は、性をおおっぴらにしない国民性では無理でしょうか。年齢を知らない恋愛、というのはこれも国民性でちょっと支持を集めないような気がします。また、「できちゃった婚」はまだまだ認知度が低いですね。

社会風土はともかくとして、育児休業や手当の拡充が一番やりやすいと思います。母親の負担はまず時間とカネで軽減すべきでしょう。政府が大盤振る舞いすれば、乗ってくる企業も増え、社会風土の改善にもつながるように思います。

育児休業あの手この手

新時短制度を模索する 給料も半分、仕事も半分……

育児休業の負担で、従業員も、会社もムリをしないでやるという暗中模索が続いているようです。こういう模索の中から、法制化してみんなでやろうという案が出てくるのでしょう。民間企業の取り組みには、おおこれは!というものもあります。

○仕事を半分、給料も半分
文字通りの制度です。実働4時間勤務です。ここで重要なのは、「それでもみんなに迷惑をかけてしまうから」という意識の克服です。制度を採用した女性課長は妊娠した女性社員1人1人と面談したそうです。

それで利用する人が出てくるようになりました。

○「半分半分」をさらに細かく
これは「仕事を半分、給料も半分」をさらに細かくして、「仕事を70%、給料も70%」としたものです。

ここではこれですね!「人が入れ替わるより、経験豊かな人に勤務し続けてもらうほうが良い。取得しやすい雰囲気を作るために上司の研修もしている」育児休業の制度には当人より、上司の教育が必要なのです。

この結果、体調に応じて段階的に休業が取れ、男性の利用者も出るようになりました。

○社員17人の会社の導入例

会社の理念のひとつに「仕事と家族の両立」を掲げ、働き方を自由に選択できる。夜に仕事が入れば、ベビーシッター代は会社負担。子どもが熱を出したら休むのは当然で、周りがカバー。

中小企業はこうでなきゃ、という感じですね。社長自ら育児している母親であるという点が大きいのです。その社長が効率を追求すると、現実としてプライベートも大事にした方がいいのです。

「育児期間中は働き方を細くしながら、長く働ける制度を企業が模索する時代。会社全体というよりも部門ごとに、様々な働き方のバリエーションを作る必要があるのではないでしょうか」と、人材コンサルタントは言っています。

妊娠したから切る、子育てするからやめるというのではなく、人材とキャリアを効率よく使うには、一時的に仕事が細くなってもやっぱり続けてもらった方が良いのです。当人ばかりでなく、会社や上司が温かく見守って挙げられる環境が重要です。

しかも、育児体験のある管理職というのは貴重な人材です。ここに挙げた管理職はほとんど育児の体験者です。実態に即した制度を運用し、育児と仕事のバランスを見事に取るにはやっぱり育児経験者ですね!

険しい育児制度の現実

育児時短勤務はわがままか 制度はあるが取りづらい現実

少子化に対応する育児に関する支援は、国がいろいろな施策を講じようとしていますが、当の育児をする両親や、企業にとってはイバラの道のようです。その内容は、

○ 育児時短を理解しない上司との戦い:上司との駆け引きに負けると、帰れないんだそうです。

○ 入社前日に付帯事項:育児時短は入社1年以上のみ。対象者狙い撃ちで対象外にする会社のやり方です。つまり、制度はあっても実際に取れるかは別のことのようです。

○ どんなに働いても最低ランク:育児時短の対象者は、時間で判断され、どんなに成果を挙げても最低ランクの評価しか得られません。育児しているだけで「有罪」です。

○ 時短分はしっかり評価ダウン:仕事の密度や質ではなく、時間だけで測ろうとします。

○ クビが怖いので社長に直訴して産休を短くし、頑張った:仕事と育児に追われた結果、夫に逃げられました。

というものです。

こういうのは書き連ねるだけ苦しいですが、悲劇です。こんな苦しい戦いをして育児をしようとする女性は本当に偉大です。少子化が進むのがわかります。来春の助成金は育児関連の拡充が主ですが、上司の意識や、人事考課まで踏み込んだ対策が必要です。そしてインフラですね。預かってくれる人がいないとどうしようもありません。

育児制度の導入のために重要なのはお金や制度ではありません。

○ 育児は重要なことであるという認識を付けましょう。怠ける理由とか、仕事より下のことという意識は捨てましょう。
○ 制度を紙に書いただけではダメで、定着させなければ意味がありません。説明会やレジュメでの積極的な啓発を行いましょう。

同情するなら、カネをくれ

若年夫婦、「同情するなら、カネをくれ」

若年夫婦が、育児の時間を取るなら、手当をもらった方がイイ、というニュースです。うーん。ちょっとショッキングなニュースですね。私自身、育児問題、少子化問題はカネじゃなくて企業や社会の意識の問題だと唱えていたので、待ったなしの現実はもっとシビアということでしょうか。

要は、
雇用の拡大は実は不正規雇用の増加だった。

経済格差が広がり、格差が固定化。

やりがいのある仕事とない仕事の格差があり、パートは後者が多い。

育児中は結局「パート」しかできない流れになっている。

施設や企業意識より”カネをくれ”になる。

格差の固定化は時代の流れだとしても、パートがやりがいを感じられない仕事が多いというのは問題ですね。パートでも社員に取り立てられたり、自己啓発に結びつく仕組みづくりを目指したいものです。

少子化対策、素晴らしい提案たち

「小泉内閣メルマガ」が少子化対策案を募集したところ、例えば以下のようなアイデアが出たそうです。

○ 老人ホームと託児所を一緒にする…老人は老化防止になる
○ 育児中の勤務形態を柔軟にする…昼~夕方勤務など
○ 第2子からの児童手当増額…年収780万円要件をなくすこと
○ 育児税の創設…養育費助成を増やす
○ 育児休暇取得の義務化…取得に応じて税制上の優遇を与える
○ 安価な賃貸住宅の建設…家族が住める住宅を都市部で増やす
○ 学校で教育する…子育ての楽しさ、少子化問題を考えさせる
○ 出会いの場を作る…結婚前提の交流会を行政が支援する

なるほど!こりゃ良いですね!既に実行されているものもありますが、育児休暇の義務化や老人ホームと託児所を一緒にするなどは特に推進すべきではないでしょうか?

少子化はお金よりも社会の意識の問題だというのが筆者の所論です。まだまだ女性も「子育ては誇るべきもの」という意識が足りないと思います。1人の人間を育成できる能力は、仕事のできる能力よりポイントが高いのです。

就職するときに、子育てで10年のブランクがあると心配される向きがありますが、堂々誇ったらいいのです。そしてたくさん育てれば育てるほど、尊敬を受ける雰囲気ができれば、少子化問題の解決のみならず、素晴らしい社会ができるでしょう。