遺族年金:本妻と内妻

「固い絆」で結ばれていても…遺族年金給付、内妻側が敗訴

別居していた本妻と6年5カ月同居した内妻かという戦いです。1審は内妻勝訴だったのですが、2審で逆転になったケースです。法律の世界では結婚も「しかるべき書類」の出ている方が有利なことは言うまでもありません。ただし一般的には…

夫婦の共同生活の実態がないと言い切るためには、
1、住居を異にする。
2、経済的依存関係が反復・継続していないこと。
3、音信・訪問が反復・継続していないこと。

の3つが必要です。この共同生活が行われていない状態が10年以上ある場合は、内妻が勝つ場合もありえます。

しかし今回のケースでは、

○ 本妻との別居生活が6年5カ月。
○ 結婚関係解消に向けた財産分割もしていなかった。

という理由で、本妻との離婚が成立していたとは言い難いとされました。ですから

○ 本妻との結婚を解消しないで内妻と挙式した男性の行動は身勝手だ!
○ 男性と内妻は固いきずなで結ばれていたようだが、それで結論を左右されない。

とまで言われました。1審では勝訴したのに、この厳しい言い草です。法は常識的な範囲で判断するのが通常です。法の手続をしていないことには厳しいのです。

1審判決は、内妻との同居期間が10年に満たなくとも「男性が死亡しなければ、内妻との生活は続いていた」として、内妻の遺族年金の受給資格を認めていました。両方に子供はいなかったのでしょうね。いればそちらに年金が行くことになります。

この場合、本妻との結婚関係は5年ですが、その点は問題にならなかったようです。やっぱり決意して婚姻届を出した効力は強いのです。

社会保険事務所:年金相談③

年金時効145人計7423万円追い払い 特例法初適用

社保事務所にも問い合わせの方が大勢来ています。記録が「発見」される方もいますが、勘違いの方も多いのです。私が体験した中では2通りです。

1、保険料を払っていない分が払われると思っている方。
2、社保事務所を通さずに「第3者機関」に直接行けるという方。

1は昔任意加入で入れるのに入らなかった方が、増額するんじゃないかとおっしゃられるというような場合ですね。年金は請求する期限が5年ということになっていました。つまり67歳で初めて請求すれば、62歳からの年金は支給されても、60歳と61歳の分はダメになっていたというものを救済するということです。

この場合60歳のと61歳の分は、払ったのに払われない、状況ですね。問い合わせの一部には払ってないから払われない、という当然の状況を呑み込めていない場合もあるのです。

2は、

今回の年金騒ぎに基づく「特別な措置」は社保事務所に行くのではないと考える方がいらっしゃるということです。さすがに「第3者機関はどこでしょうか?」という問い合わせには遭遇していませんが、第3者機関にしてもまず社保事務所を通すということを心得ていただければと思います。

しかし最大の被害者は年金を受給される方々ですね。針小棒大に報道するマスコミ、さらに選挙を控えた政界の思惑に翻弄される、我々庶民の悩みは尽きることがないようです。

受付に座りますと、いろいろな方がみえられます。その大部分は切実な要求の方ですが、普段なら何でもないことでも、不安になって問い合わせする方が増えています。「年金制度をぶち壊せ!」も結構ですが、福祉というのは国家レベルの好意であることを考えれば、批判だけしても何らの進歩もないでしょう。

一番大事なのは庶民の安心です。憲法の「必要最小限度の生活」は、本人の原因以外に脅かされることのない社会を目指したいものです。

社会保険事務所:年金相談②

「仕事と生活の調和」推進役・厚労省、残業時間が最長
また年金相談で職員に暴行事件、京都の64歳を逮捕

社保庁の話題が多いです。私の年金相談の応援も3回目になりました。戦場のような社保事務所も死闘が続いています。

私の行っている事務所でも、やっぱり京都の事件のように問い合わせに答えがなかなかない、という動機の抗議が多いです。さすがに暴力を振るうヒトはいませんが、この年金問題の危機感に、なかなか回答が出せないことへのイライラは分かります。

この騒ぎ以来、社保事務所はとにかく対応が良くなったのです。それも回答に時間がかかる原因です。脇で聞いていると、年金相談はとにかく丁寧ですし、個人的に勉強になります。私のような臨時担当者でも、丁寧さを要求されることは変わりません。

社会保険大学校で年金相談員の資格を取ったような方は、明治時代以来の恩給制度に至るまでよく知っています。そこまで知らないと相談には対応できないのです。ちなみに恩給制度が全部現在の年金に統合されたのは昭和42年です。

私の行っている事務所は窓口が足りず、カウンターの中に臨時「窓口」を設けて、相談を受け付けています。それでも10人以上の待ちが出て、人数を見てあきらめる方が多いのです。

考えてみれば年金制度が非常に複雑になっている原因は「対応の良さ」にあるような気がします。日本の年金は、もらえない?それならこの条件でどうだ!コレならもらえるだろう、というような条件の羅列です。つまりもらえるようにできている制度なのです。数々の問題になった不正や怠惰はともかくとして、制度自体は民間の個人年金と比べても各段にオトクです。

普段の業務も差し置いて、特に正職員の方は過労で青黒い顔をして罵声を浴びながら、それでも笑顔を浮かべて臨時相談に対応しています。オトクな制度を維持しようと身を削る彼らを、どうにも非難できないような気持ちになるのは私だけでしょうか。

社会保険事務所:年金相談①

今回の”年金騒ぎ”の助っ人として年金相談の援助に、社保事務所に行ってきました。雨の月曜日で、来客はこの1ヶ月で奇跡的な少なさだそうです。拍子抜けしましたが、役所のカウンターの内側に座ったのは初めてとあって、その職場の雰囲気をいろいろ感じることができました。

結論から申し上げますと、社保事務所の職員の方は、非常に甲斐甲斐しく働き、公僕としての仕事を果たしているなと感じました。カウンターにお客さんが来るとその都度あいさつすることは勿論、ためらいなくカウンターを出て書類の作成相談に応じるなど、親身な対応が目立ちました。

印象に残ったのは、管理職の方が相当カリスマ性を持って当たっていることですね。私に対しても「ボンヤリしているようならドヤシつけてください」と遠慮なく言います。シニアの職員の方でも、個人の書類を外部から見える位置に置いていると容赦なく叱責が飛びます。こんな「お役所」はこれまで想像もしませんでした。

私は過去の社保事務所も知っていますが、この改革の意欲には驚きました。

社保庁は3年後に民営化が予定されている役所です。ゴタゴタの後相当ハッパをかけられたのでしょう。トップが変わらないと職場の雰囲気は変わらないということを、きちんと理解しておられます。

これまでの役所のぬるま湯的雰囲気は、少なくともカウンターの中に1日闖入してきた男には感じられませんでした。「ドヤシつけてください」の管理職の方は土日の休日窓口も含めて、眠るヒマもない連続勤務です。実にお疲れさまです。

お客さんは少なかったのですが、不祥事をなじる方もいらっしゃいました。しかしどの方もやっぱり切実な要求で来所されます。「年金だけで食べているの」と言う方にこそ、安心していただかなくてはなりません。

単純な相談で一番多かったのは、住基ネットワークに対応する生存確認の方法確立=年金受給者の現況届提出が原則不要になるということでした。送られてきた書類を手に「年金が停まるのか」「手続はどうするのか」と相談に見えられるのです。

私が1日体験した範囲では、社保庁改革は一連の”騒ぎ”を経て、民営化に向けた確かな足取りを始めたように感じました。民間の営業会社のように張り詰めた雰囲気はこれまでなかったものです。新生の組織による健全な年金運営を期待したいものです。

明日から公的年金廃止!

となったらどうなるでしょうか?そんな事態になった国があります。高齢者10万人の年金ゼロに…トルクメニスタン(読売新聞) 経過措置も、ご説明も、謝罪も何にもなしのようで、いきなり「年金やめます」という宣告がなされたもののようです。

年金受給者33万人のうち、
○ 3人に1人が全額支給停止
○ 3人に2人は大幅減額
○ 障害者年金廃止
○ 追い討ちに、「過払いの」年金返済請求

うわあ~過酷ですね。こんな暴挙は過去のどんな独裁者もなしえなかったことでしょう。これほど国家が追い込まれているのでしょうけど、心臓発作で急死する高齢者が相次ぐというのは分かります。トルクメニスタンという国、どんな国なのでしょうか?

○ もともとソ連の一共和国
○ 永世中立国(スイスと同じ)
○ 砂漠に覆われている
○ 資源は豊富
○ サパルムラト・ニヤゾフの独裁。終身大統領。

このニヤゾフ終身大統領の「旧ソ連は年金をやりすぎた」というのが、今回の「改革」の理由です。本人は結構ソ連共産党の世話になっているのですが。

よくこんなことを「正義の」アメリカや国連が黙っているものだと思います。しかし西南アジアの「タン」の付く諸国(旧ソ連の諸国に、アフガニスタンも含む)と、キルギスは紛争の発火点といわれているので、ロシアとの関係も考えて、国際社会の手が下しにくいのでしょう。

しかしいざ手を下す段になると、年金を奪われた高齢者が真っ先に戦火の犠牲になるでしょう。歴史的にはチムール帝国はじめ、世界の文明の中心になったこともある地域です。共産主義や独裁をやめた後の混乱を収める何らかの受け皿が必要です。もっともそれが見つからないからイラクなどは困っています。

障害年金、明るいニュース

ポリオ2次障害:障害厚生年金の支給対象に 社保庁

障害厚生年金のお話です。要は厚生年金に入っている方が、事故や病気で寝たきりになったとき、もらえる年金のことなのですが、その支給対象範囲が広がったというお話です。

この年金、障害「基礎」年金と並んで、専門家の間では結構申請が難しいものとして有名です。その難しさはいろいろあるのですが、その一つに「初診日要件」というものがあります。

つまり、初診日(初めてお医者さんにかかった日)に厚生年金に入っていた≒会社に居たということです。何だ簡単なことじゃないかと思いますが、このポリオ2次障害は複雑でした。

整理しますと、
1、ポリオ1次障害になった。
2、治った。
3、就職して厚生年金に入った。
4、ポリオ2次障害になった。
5、さて初診日は1の時点か4の時点か?

という問題です。初診日が1であれば当然就職していませんから、4で医者にかかっても4が初診日にならず、「初診日に厚生年金に入っていた」という要件を満たさないということだったのです。

法律は恐ろしいですね。こんな合理的でない例はいくらでもあると思います。今回はたまたま症例が多かったから救済しようということになりましたが、少しずつ声を上げて、やっていくしかないと思います。

国民年金強制徴収

国民年金保険料は都内での強制徴収が急増しているようです。差し押さえ全国の8割を占めるとのこと。

やれやれ、実際いろいろ言われていたことが、実行されているようですね。税金なら「マルサの女」のようにカッコいい役どころですが、保険料はどうでしょう。憲法でいうところの「納税の義務」の”税”に保険料も入ってくるような感じです。

大富豪の邸宅ならともかく、なけなしのフリーター(私もそうだったことがある)の家に、スーツでびしっと固めたイジワルなオジサンたちが大勢入って、執行証書を示し「国民年金の強制徴収に当たる!」と宣告して、せんべい布団だの、パソコンだの根こそぎ持っていく、というようなことをしているのでしょうか。

そもそも年金というのは、福祉のはずですが、「押し付けの福祉」は「押し付けの親切」にも似て嫌な感じがしますねえ。俺が親切にしてやろうというのに何だ!というのは時によってはありがたいですが、大部分は不快なものです。

しかし、やっぱり、障害を負ったり、老後に食い詰めたりすれば、社会全体に被害が出るのは当たり前です。そうならないように国が責任を負うのはこれも当然の話です。

ではこういう「ふんだくる福祉」をどうするべきなのでしょうか。

悲しいことながら、ふんだくってでも保険料を徴収する構図は、なくしてはならないと思います。しかしそれは「保険料」であってはならず、「税金」であるべきです。例えば保険料の分を消費税で賄うようにすれば、払わないということは0になるでしょう。なぜ福祉を強制的に押し付けるのか、という理由が必要です。

大事なことは、この日本は死体やガイコツがゴロゴロ転がっているような国ではないし、かわいそうな人がむごたらしく死んでいくのを傍観して平気な国でもないということです。これまで先人は、戦争や病気のたびにそれを克服する様々な対策をなしてきました。その動機はやっぱり「気の毒で見ていられない」という感情に基づくものだったと思います。

この年金の強制徴収は、社会が個人に社会への絆を確認する愛情だと思うことにします。あとはこの保険料を無駄遣いしない様に当局に願うとともに、それを我々国民が監視するのを怠らないようにするべきです。

積立方式の年金とは?

年金には、賦課方式と積立方式の運営方法があります。

要するに、若い世代に頼るか、自分で稼ぐか、ということです。今の日本の年金制度はほとんど賦課方式ですが、積立方式の年金制度もあります。それは農業者年金です。

この制度では納付された保険料は将来の自分のための年金給付の原資として積み上げられ、将来は運用益をプラスして老齢年金を受給することになります。

また、「付加年金」を必ずつけなくてはならない点も特徴のひとつです。保険料400円で、将来200円×納付月数を給付されることになります。

つまり、「農業の方」は基礎年金+農業者年金+付加年金を給付されることになります。いくらもらえるかというと、

保険料月額2万円に運用益3%とすると、30年間加入で夫婦2人で月額26万円受給できるようです。

農業者の定義は、60歳未満の農業に従事するものも含まれます。つまり兼業農家つまりサラリーマンでも加入できます。年間60日以上農業に従事するものであれば良いのですが、兼業農家の方は会社で厚生年金に入っていると加入できないので注意が必要です。

掛金は積立式らしく、2万円~6万7千円まで加入者が決定できます。特例保険料というのもあって、これは「地域の若き農業の担い手」として認定された方が、月額1万円に割引される制度です。

取り扱い窓口はJA(農協)です。国は農業者年金を借りて、将来厚生年金などを積立化する実験を行っているのではないでしょうか。

脱退一時金というもの

日本に国籍のある人なら、国民皆年金のもと、年金制度に必ず加入しなくてはなりません。「年金保険料なぞ払いたくない!」という方の、その方法としては…

1、日本国内から国外に住所を移す。または日本国籍を喪失する。
2、60歳になる。
3、各種障害年金を受給する。
4、所得が少ない状態で免除申請をする。
5、滞納する。
6、死ぬ。(笑)
7、…

と、いくつか思いつきますが、近年目立つのは1によく似た年金制度の脱退に関する脱退一時金の手続きです。つまり日本国籍のない人のための制度です。

外国から日本に働きに来た方でも、大抵の方は社会保険に加入義務があります。しかし年金をもらうには25年の加入期間が必要です。2~3年で帰る方であれば、日本の年金は掛け捨てになってしまいます。それで、今まで払った分のいくらかでも返してあげようというのが表題の「脱退一時金」の趣旨です。

しかし、現実の手続きは困難を極めます。…

なにしろ本人の居場所が分からない場合が多いのです。つまり、お金の返し先が分からず、年金手帳の番号も分からないのです。そこを何とかして探って、成功しても金額が4万円とかいったところです。

しかし地域によっては月に日本円1万円で暮らせる地域もあることを考えると、これはないがしろにはできません。人助けにはなるが、見入りは余りありません。しかし外国人でも返せるものは返してあげようという、そんな人情のある会社さんもあるのです。手間はかかりますが…うーん、大赤字ではありますがやってあげるしかないですね。ギリとニンジョーの国の人ですから。

年金受給者:ヒトラー

総選挙が自民党の圧勝に終わり、小泉首相は独裁者になって狂気の道を突き進むのではないかという恐れがあるようです。「小泉首相はヒトラーだ!」と言い放った方もいたようですが、ヒトラーとは第二次世界大戦を起こし、ユダヤ人大虐殺を行ったあの狂気の独裁者です。

ヒトラーの後半生は有名なものの、その行動の基盤となった前半生は意外に知られておらず、歴史学者の研究の対象となるくらい不明なものでした。

これは当時の状況に加えて、ヒトラーが政権に付いた後に過去を故意に隠したせいもあったのです。しかし近年では研究が進み、若き日のヒトラーが、芸術家を志す傍ら、年金制度で生活費の一部を賄っていたことが明らかになっています。ここでは、ヒトラーの前半生を辿ることで、100年前と現在の日本の給付水準を簡単に比較してみたいと思います。

ヒトラーの父親は10代の頃から40年勤めたオーストリアの税関官吏で、退職時の年金は退職当時の本俸が100%支給されました(現在の日本では退職時の60%前後です)。その父親が死亡した後残された母親、ヒトラーとその妹には遺族年金として父親の年金の50%が支給されました(現在の日本では原則として遺族厚生年金で75%です)。父親の給料は小学校の校長より多かったといいますから、相当の財産も蓄えられていたようです。

ヒトラーはこの間、当時の学校に合わずに退学し、今風に言えばフリーター生活を送っていました。父親の死後4年で母親も死亡後、両親・叔母の遺産と20歳まで支給される孤児年金で生活し、美術学校への試験の失敗後は、それらに加えて自分の描いた絵を売り歩く生活をしていました(現在の日本では子に対する遺族年金は、障害者でない限り18歳に達した後の最初の3月31日までです)。そうこうしているうちに、第1次世界大戦が起こり、ヒトラーに政治家への道を志す決意を決めさせることになるのです。

この例を見ると、年金は100年の昔も現在の日本の制度もそれほど給付水準に違いがないことが分かります。つまり国や時代が変わっても、老後の生活に必要な額を計算する上での考え方はそれほど変わっていません。

ちなみに当時のドイツは、社会主義鎮圧法などで社会主義を取り締まる一方、最初に健康保険や年金制度を導入した当時としては高福祉の国でした。鉄血宰相ビスマルクの「アメとムチ」政策の成果です。

さて、読者の方はあるいは、上記の文章の流れからして年金制度問題と、彼の独裁者への道との因果関係の解き明かしを期待された向きもあるかもしれませんが、この短文で私が言いたいのは、先ほど申し上げたように100年前のドイツの年金制度と、現在の日本の制度の簡単な比較でした。

ではここで、少し視点を変えて昨今の日本での年金制度論議を見てみますが、その中でも重要なのは、このままゆくと年金の給付額が生活保護を下回る事態もあり得るということです。先に見たようにヒトラー時代のドイツではそのような逆転現象は考えられません。しかし日本では老後の保障という意味の年金の意義は崩れ去り、働かなくても食えるほうが遥かに良いということにすらなってしまうかもしれません。

そうなれば、社会保障費の増額という金銭だけの問題ではなくなり、世の中全体に社会的歪みをもたらすことになります。そんな社会が現出してよいはずはありません。
年金制度の改革に際してはこれらの問題にまで踏み込んでの、公正な負担に立脚した、生活する上での適度な保障とは何かという観点からの議論をして欲しいものです。

旧法の年金

外国生活が長く、しかも旧法適用(大正15年以前生まれ)の女性の方の年金相談がありました。
お聞きしたところでは…

第2次大戦前から戦後にかけて一般企業に勤務:正社員
結婚後20数年外国勤務の夫と海外生活:扶養等の手続きは分からない
夫の死後、日本に住み、昭和60年ごろ年金相談をするが、百数十万円払わないといけないと言われ、あきらめて現在に至る。遺族年金も手続きなど一切していない。

旧法で分かっていることは…

○大正15年以前生まれがもらえる
○保険料納付済、免除期間が25年以上必要(期間短縮特例あり)
ということですが、この方は生まれてから自分で払った記憶がないという話なのです。年金手帳もありませんし、転職などにかかる資料もないので、記憶の裏づけも不確かです。

夫の仕事は公務員か私企業かよく分からない風ですし、旧法が出てくるとは思わなかったので難問です。一応、管轄の社会保険事務所に相談に行くようお勧めしましたが、本人は「一銭も払っていないので出ない」と思っているようです。昭和60年頃の年金相談が決め手になりそうですが、社保事務所の結論を待つしかないようです。

年金の仕組みとは?

厚生年金は現在、年収の約14%の保険料で賄われ、1年ごとに上がり、最終的には18%になることになっています。ところが今日、保険料15%でもリタイヤ前の賃金の40%をカバーできるではないか、という研究結果が出ました。

現在の厚生年金保険料は、将来の年金給付水準をモデル世帯(夫サラリーマン、妻専業主婦)で、年収の50%を確保できるように設計されています。その結果、平成29年までは、厚生年金は値上がりに次ぐ値上がりを続けることになります。

老後に必要な金額は様々な説が出ていますが、今回の試算は老後は40%の収入でも大丈夫、という説の上に立っています。しかし長生きのリスクだけは神ならぬ身では分かり兼ねます。そこが少子化や財政上の問題に並ぶ、年金への将来的な不安のもととなっています。

今の年金制度は、「これだけ必ず金を出せ。でも将来は知らないよ」という制度になっています。そういうことを言われれば、誰でも腹が立つでしょう。たとえ給付が減ったとしても、それが自己責任であればどうでしょうか?少なくとも国への不信感は軽減されるのではないでしょうか?

現在一律のエスカレーターのような人生を送ることが難しくなりつつある今、「払わなかったからもらえない」は当然としても、「払ったのにもらえない」が助長されることが、年金問題の諸悪の根源です。

結局年金制度は「積み立てた分もらえるよ」という方式にせざるを得ないと思います。そのためには、老後に必要とされる金額をなるべく低く見積もること、つまり支払いへのハードルを低くすることで、抵抗感を和らげること、15%払わないと全部非合法、というのでなくて、10%でも払えば良いじゃないか、しかし老後はそれだけ厳しくなるよ、という自己選択の余地を入れるべきだと思います。

国民年金では全額免除、一部免除と言う形でこういう仕組みが既に現実化しています。経過措置で複雑になった年金制度ですが、こういう複雑さは、むしろ歓迎すべきではないか、人生を個別に診断できる仕組みづくりで納得できるものが出来上がるなら、いくらお金と手間がかかってもいいと思うのは私だけでしょうか?