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魔法の指輪

ロシアかウクライナだったか、農村を舞台とした童話があります。

ある農夫がわなにかかった鳥を助けました。鳥は「ちょっと待ってて」とどこかへ行って、戻ってくると、1つの指輪を農夫の手のひらに落としました。そしてこう言いました。「これは魔法の指輪です。この指輪を指にはめて回しながら願い事を言うと、どんな願いでもかないます。しかし1度しか使えないから良く考えて」

みなさんならどうするでしょうか?この農夫はどうしたでしょう?無論、「1兆円が欲しい」「世界征服がしたい」という類のものではありません。

農夫の奥さんはこれを聞いてこういいました。「うちは貧乏だから畑を一反願ってよ」当然で、ささやかな願いです。ロシアで言う農奴、自前の農地を持たない小作農だったのでしょう。

しかし農夫はこういいました。「そりゃ指輪を回せば畑が手に入るだろうしかし、一反の畑くらいなら、もう少し働けば何とかなりそうな気がする。もう少し働いてどうにもならなかったら指輪を使おう」そして一生懸命働いて、一反の畑を手に入れたのです。

奥さん曰く「一反ゲットしたのだから、もう一反を指輪でゲットしようよ」
農夫曰く「いやいや、もう少し働けばもう一反位は何とかなりそうだ。ダメだったら指輪を使おう」
この調子で次々と農地を増やし、大地主になって子や孫にも恵まれ、農夫は世を去りました。

葬式のときにある子が言いました。「お父さんは指輪を使わずに亡くなったが、最後の最後にこの指輪を使ってみようか」しかし、農夫の奥さん(今は未亡人か)は言いました。「お父さんが使おうとして使わなかった指輪なんだからお棺に入れてあげよう」と。

要するに勤勉の美徳を称えたお話ですが、農夫がこの指輪を使ってしまったら、たぶん農夫は大地主にはなれなかったと思います。

転じて、どうも今の日本人は、「魔法の指輪」でゲットした高度成長期の財産の上で勤勉になっていないような気がします。明治時代は「列強の植民地になるな」、戦後は「焼け跡からの復興」でしたが、今、魔法の指輪はどこにあるのか?それを回して性急な結果を求めていないか、気になるのです。しかし必要なのは魔法の指輪そのものではないことを多くの若者が気づき始めていると思います。