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傭兵の作った社会

傭兵というと私は「ランボー」や先日のイラクの日本人傭兵を思い出します。昨日、ドイツの30年戦争についての本を読みました。

ちょうど日本では江戸幕府の基礎が固まって、天下泰平だった時期。ドイツでは宗教改革の影響で、旧教と新教のあいだで30年も戦い続けた時期がありました。ここで活躍したのが「傭兵」です。

「傭兵」は文字通り雇われる兵隊なのですが、現在の自衛隊や、各国の軍隊のように公務員ではありません。戦争が起こった国へ行って、自分たちの部隊を売り込み、高く雇ってくれる方に参加します。公務員というより、自営業です。当時の軍隊はこれが主流でした。

しかし30年も戦い続けるわけではなく、当然中休みがあります。むしろその期間が長いことが問題です。公務員は戦争がなくても国民の財産で養ってもらえますが、自営業の傭兵は戦争の期間を限っての「有期雇用」なので休戦中は失業してしまいます。

今のように失業保険があるわけでもないので、戦争がないときは収入もなく、武器もあるとなると、傭兵は農村へ略奪に走ります。戦争があってもなくても奪われた結果、虐殺や餓えでドイツの人口は1,800万人から700万人に減りました。戦争を続けた方が良いわけなので、八百長戦争をやって真剣に戦わないことも多く、30年も戦争が続いたのです。

ここで重要なのは、傭兵の身分です。有期契約で、雇用が確保されないとなると、仕事も私生活も荒れ果てるというのがよく分かります。この戦争後、ドイツは向こう200年分裂し、産業の発展もイギリス・フランスに比べて遅れを取りました。

傭兵の戦争で社会の長期間の荒廃を招いたこの戦争の顛末を見て、継続的な雇用と、それに伴う組織に対する帰属意識の重要性が何かよく分かったような気がしました。