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人事制度と助成金の執筆

ビジネスガイド 2008年9月号

久しぶりの記事です。ただしこれまでは「広く浅く」助成金の改正情報などをお伝えしてきたのですが、今回は「狭く深く」助成金を掘り下げた形になりました。その結果人事制度などにも踏み込む内容になっています。

中小企業雇用安定化奨励金の実務の内容です。

屋上屋を重ねる助成金という記事でご紹介しましたが、この助成金は政策的には「ワーキング・プア」撲滅という使命を持って作られたものです。しかし鳴り物入りで創設されたのは良いものの、現場の助成金申請の担当者はかなり戸惑っているようです。

この助成金の実務上の問題点は2点あります。
○ 中小企業短時間労働者均衡待遇推進等助成金(記事中ではパートタイム均衡待遇推進助成金と略称)との兼ね合い
○ 人事制度の作り方

詳しくは記事の内容に譲りますが、この2点が具体的にどう問題になったでしょうか。

○ 同じ会社で、同じ要件で、同じヒトが助成金を受けられる場合がある。
○ 中小企業向きな人事制度を審査するのに時間がかかる。

という点です。
まず前者ですが、同じ会社で契約社員とパートタイマーの両方を正社員に引き上げる規程を作ったとして、「パートタイマーの契約社員」はいったいどちらに行くのか?という問題です。これは記事に答えが書いてありますが、今後の法改正によっては分かりません。「助成金の2重取り」はお上が最も嫌うところです。

後者は「大企業の人事制度を移しただけでは、中小企業では必ず失敗する」という時代の流れについていけていない、という問題です。記事ではお上に太鼓判をもらった制度を書きましたが、そもそも仕事の格付を紙1枚に書き表すというのが、中小企業の現実にはナンセンスなコトが多いのです。

ヒトの仕事をサポートした場合はどうなのか、時間を掛けずに処理した場合は、時間を掛けた場合と同じなのか、という問題が出てきます。「これこれこういうことができる」とした格付表にはそういうことは加味されていません。原因は年功序列の公務員の給与体系を元にしていることなのです。それでは中途採用も多く、能力もマチマチで貢献度が複雑な民間の現実に合わないのです。

今この助成金も審査に入ってますが、担当者を苦慮させているのはこの点です。民間の社長さんやコンサルタントが苦心した独自の人事制度の趣旨をちゃんと汲めるのか、時間が経たないと分かりませんが、今から心配です。